自宅の駐車場などに置かれたアーチ型の車止めを、第三者が勝手に動かしてUターンしたというようなケースは、近年増加傾向にあります。このような行為は法的にどのように評価されるのでしょうか。器物損壊罪に該当する可能性や、警察への相談のポイントについて解説します。
器物損壊罪とは?基本的な定義を確認
器物損壊罪は、刑法第261条に規定されており、「他人の物を損壊し、または傷害した者は、三年以下の懲役または三十万円以下の罰金もしくは科料に処する」と定められています。
ここでの「損壊」とは、物の機能を失わせたり、価値を減少させたりすることを指します。必ずしも破壊されていなくても、「正常な使用を妨げる程度の変形や破損」があれば、損壊と認められる場合があります。
勝手に車止めを動かす行為は損壊に該当するか?
アーチ型の車止め(土台に水や砂を入れるタイプ)は、比較的容易に動かすことができます。もしそれを第三者が無断で動かした場合、次のような点が焦点となります。
- 実際に破損や変形があったか
- 使用者(所有者)の意思に反して行われたか
- 元に戻されたかどうか
元に戻されていても、一時的に私有物の支配を侵害されたと感じる場合は「軽微な損壊」として捉えられることがあります。例えば傷がついた、車止めがずれて使いづらくなった、などがあれば、器物損壊の構成要件に該当する可能性があります。
警察に相談する場合の注意点と手順
まずは、「所有物に対する無断接触・移動があった」という事実を冷静に伝えましょう。次の準備があるとよりスムーズです。
- 防犯カメラの映像(時間・人物・行為が確認できるもの)
- 破損・変形の有無が分かる写真
- 被害届を出す意思があること
ただし、警察の判断によっては「民事不介入」として処理されることもあります。その場合は弁護士や法テラスへの相談が有効です。
民事での対応も視野に入れる
器物損壊での刑事対応が難しい場合でも、民事上の損害賠償請求は可能なケースもあります。たとえば「無断で動かされ傷がついたので修理費を請求したい」というような形です。
このような場合は、証拠の保存(写真や映像)が特に重要です。また、継続的にトラブルがあるようであれば、内容証明郵便などで警告することも検討できます。
再発防止のためにできる対策
無断移動を防ぐための対策としては、以下のような方法があります。
- アーチ型車止めにチェーンやロックを付ける
- 「防犯カメラ作動中」「私有地につき立入禁止」などの表示板を設置
- 道路側からのアクセスを物理的に制限する(プランターなどの設置)
特に、防犯カメラがあるだけでも抑止効果は高まります。実際に録画されていなくても、設置されているだけで相手の行動を抑える効果があります。
まとめ:動かされた状況と証拠が鍵
車止めを勝手に動かされた場合、それが損壊とみなされるかは、物理的な破損や使用妨害の程度によります。警察に相談する際は、客観的な証拠と落ち着いた説明が重要です。また、再発防止のための対策も並行して行うことで、今後のトラブル回避につながります。