追突事故後の通院に有給休暇を使った場合の休業損害請求はどうなる?知っておきたい補償の考え方と実務対応

交通事故による通院のために有給休暇を使った場合、どこまで休業損害の請求対象となるのか疑問に感じる方は多いのではないでしょうか。特に、半日有給や1時間単位の休暇など勤務体系に柔軟性がある場合、補償範囲の取り扱いも複雑に思えます。この記事では、実際にあった事例を参考にしながら、通院時の有給取得と休業損害請求の基本的な考え方について詳しく解説します。

■ 休業損害とは:事故により得られなかった賃金の補償

休業損害とは、交通事故の被害者がけがの治療や通院のために本来得られるはずだった収入が減った分について、加害者側に請求できる損害賠償です。有給休暇を使用して休んだ場合でも、実際の損害(休暇を失ったことによる不利益)が発生していると見なされ、請求可能とされています。

このため、事故に起因する通院が理由で有給を使った日についても、労働日であれば基本的には休業損害として計上できます。

■ 半日有給で1時間しか通院していない場合の扱い

ご相談のように「半日有給を取得し、そのうち実際にリハビリに要したのは1時間だけ」というケースでは、残りの時間を自由に使えるという点がポイントになります。

裁判例や保険実務においては、あくまで「通院のために取得した有給」として休業損害を計算するため、1時間であっても半日有給を使っていれば、その分の収入減は損害とされる傾向があります。ただし、保険会社によっては、通院に要した時間や距離、頻度などをもとに合理的な時間のみを補償対象と判断することもあります。

■ 保険会社が認定するのは「通院に合理的に必要な時間」

半日有給であっても、保険会社は「実際に病院でかかった時間+移動時間」をもとに補償額を算出する傾向があります。そのため、たとえ4時間の休暇を取っていても、1時間程度しか通院に関係ないと判断されると、その1時間分の賃金相当額しか支払われないこともあります。

そのような場合でも、仕事の都合や病院の時間帯に合わせるためにどうしても半日単位での取得が必要だったことを説明できれば、補償範囲の拡大につながる可能性があります。

■ 通院と有給のバランスを取る実務的な工夫

1時間有給は取得回数に上限がある場合、それを温存するために半日有給を選択することは合理的な判断です。その理由も含めて、通院に必要な対応であったことを記録として残しておきましょう。

たとえば、勤務表のコピーや診療明細、病院への到着・出発時刻が分かる記録があると、交渉時の根拠になります。加えて、就業規則や人事制度上の制約も保険会社に示すと、交渉がスムーズに進みます。

■ よくあるトラブルとその回避法

実際の補償請求では、以下のようなトラブルが起こりやすいです。

  • 「通院時間が短いので半日分は払えない」と言われる
  • 有給=収入の減少がないので損害なしと主張される
  • 診断書や通院記録が不十分で通院実績を証明できない

こうしたトラブルを回避するには、通院日時と時間を明記した診療明細や医師の所見、会社側の休暇管理システムの記録などを一貫して保管・提示することが重要です。

■ まとめ:正しく申請し納得できる補償を得よう

追突事故によるリハビリ通院のために有給休暇を利用した場合、その内容や取得時間に応じて休業損害の補償対象となります。特に、半日有給を使っているが通院時間は短いという場合は、理由や勤務制度の説明を補足することで、より正当な補償が得られる可能性が高まります。

適切な証拠の収集と、相手保険会社との丁寧なやりとりが、納得のいく結果を得るカギになります。必要に応じて交通事故に強い弁護士や社労士に相談しながら進めましょう。

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