刑法の論述式試験で共同正犯を問われたときの書き方と事例答案の型を解説

刑法の論述問題では、条文・判例・判例理論を使って論理的に事案を評価する力が求められます。特に「共同正犯」の問題では、構成要件該当性→違法性→責任の順に、実体法上の論点を精緻に検討することが重要です。本記事では、共同正犯の基本構成と、実際の事例をもとにした論述例を紹介します。

刑法における共同正犯とは?

刑法60条に規定される共同正犯とは、2人以上が「共同して犯罪を実行した」場合に、その全員が正犯として処罰されるという原則です。単なる幇助や教唆と異なり、共謀と重要な実行行為が求められます。

また、「共謀」には黙示の意思連絡でも足り、「実行行為」には準備行為に近いものでも判断が分かれることがあります。

論述答案の基本構成

論述の基本構成は以下の通りです。

  • 問題提起:「被告人およびXの行為が殺人罪の共同正犯として成立するか」
  • 大前提:共同正犯の要件(共謀+実行行為)を示す
  • 小前提:具体的な事実に照らして、要件該当性を検討
  • 結論:それぞれの罪責を認定

このフレームに当てはめることで、答案に論理的な流れが生まれます。

実際の事例問題と論述例

以下は、提示された事例を基にした答案例の骨格です。

1. 被告人の罪責
被告人は、女友達と通話中に侮辱され、激高して殺意を抱き、Xに包丁を持たせて現場に同行させ、Xに対し「やられたらナイフを使え」と指示した。この行動は殺意ある共謀の存在と、Xを道具として利用しようとした積極的関与が認められる。
また、現場では自身は距離を取り、女友達と話していたが、共犯関係に基づく実行行為の分担が成立するため、共同正犯(刑法60条)として殺人罪の成立が肯定される。

2. Xの罪責
Xは、当初は加害の意思が乏しかったが、包丁を所持し指示を受けたうえで現場に赴いた時点で、黙示的な共謀が成立しうる。また、Bからの予期せぬ暴力により正当防衛の成立が検討されるが、Xは被告人の加勢を期待しつつ包丁を使用する決意をしており、結果的に重大な加害行為を実行した。
正当防衛の成立には急迫不正の侵害・防衛の意思・相当性が必要であるが、本件では過剰な反撃となっており、防衛行為の限度を超えた過剰防衛(刑法36条2項)が成立しうる。

答案作成で注意すべきポイント

共同正犯の成立を検討する際には、以下の観点に注意しましょう。

  • 共謀の有無は「意思の連絡」の解釈が鍵
  • 共謀が成立していれば「実行行為の分担」によって正犯性が認定される
  • 主観面(殺意・共謀の意思)と客観面(行動の分担)を分けて分析する

また、正当防衛や過剰防衛の検討は、構成要件該当性を認めた後の違法性阻却事由の章でしっかり言及することが望まれます。

まとめ:型と論点で高得点を狙う

刑法の論述では、事案ごとの事実評価に加え、条文・判例・理論の正確な理解と応用力が問われます。今回の事例では、共謀の成立と正当防衛の成否が主要な論点であり、それらを型に沿って整理し、丁寧に分析することで説得的な答案を作成することができます。

まずは、定型の論述構造を覚え、判例に基づいた論証パターンをいくつか身につけることが合格への近道です。

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