姉妹間での相続にもかかわらず、法務局から亡くなった両親の出生から死亡までの戸籍謄本の提出を求められたというケースは珍しくありません。「以前も出したのに、なぜまた?」と疑問に思うのも無理はありません。しかし、相続登記における戸籍提出には明確な理由があります。本記事では、不動産登記手続きにおける戸籍の役割とその必要性について詳しく解説します。
相続登記に必要な戸籍とは?
不動産の所有者が亡くなった際、その相続登記を行うには、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本のほか、相続人の関係性を証明するために必要な家族の戸籍も揃える必要があります。これによって、相続人の確定が行われます。
法務局は「誰が相続人か」を戸籍によって確認する義務があるため、仮に前回の登記で提出されたとしても、その登記とは別件である以上、新たに確認を行うのが原則です。
姉妹しかいないのに両親の戸籍が再提出?
過去に母親の相続時に姉妹2人で登記を済ませたとしても、その際に法務局が「他に兄弟姉妹がいないこと」を改めて記録・証明しているわけではありません。登記申請はその都度「登記完了」として閉じるため、次の相続(今回の姉→妹)では、再度一から相続人の有無を確認する必要があるのです。
したがって、法務局は被相続人(姉)の父母の戸籍を求め、他の兄弟姉妹や代襲相続人の可能性がないかを確認します。
なぜ出生から死亡までの戸籍が必要なのか
相続関係の証明には、単に死亡時点の戸籍だけでは不十分で、出生から死亡までの戸籍を通して家族関係の変遷(例えば前妻との子の存在など)を確認する必要があります。
仮に父母のどちらかが再婚していて異母兄弟が存在していた場合、法定相続人となりうるため、戸籍を通してこれを確実に排除するのです。
兄弟姉妹間の相続では特に厳格に確認される
直系尊属(親)や配偶者、子どもが相続人となる場合と異なり、兄弟姉妹間での相続は相続順位が下がるため、相続人の確定作業がより複雑です。特に兄弟姉妹は「代襲相続(例えば亡き兄の子)」が発生するため、法務局は戸籍を通じてあらゆる可能性を検証します。
そのため、戸籍の収集範囲も広くなり、結果的に「一見無関係に見える両親の戸籍」も必須となるわけです。
過去の提出履歴は登記ごとにリセットされる
「前回提出した戸籍があるのだから使い回せばよいのでは?」と思うかもしれませんが、法務局は登記申請ごとに独立して書類を管理します。前回の登記が完了すれば、提出書類は保管されず、次の申請時には新たに確認が必要になります。
これは、不動産登記が「当事者申請主義」に基づいており、申請者が証拠書類をすべてそろえて提出する義務があるためです。
まとめ:再提出には合理的な根拠がある
一度提出した戸籍を、相続のたびに再度提出する必要があるのは煩雑に感じるかもしれませんが、相続人の確定という登記の正確性を保つためには重要なプロセスです。
兄弟姉妹間の相続では代襲相続の確認も必要となるため、父母の出生から死亡までの戸籍を通じて、他の相続人の可能性を確実に排除することが求められます。納得しづらい部分もありますが、法務局の要求には明確な法的根拠があります。