信号待ち中の追突事故は過失割合が10:0となることが多く、被害者側としては一見スムーズに補償されるように思えます。しかし、実際に全損となった場合、補償金額や保険会社とのやりとりには注意すべきポイントがあります。今回は、車両保険と相手保険から支払われる補償金についてわかりやすく解説します。
相手の保険から支払われるのは「時価額」が原則
まず大前提として、相手の自賠責保険は「人身事故」のみが対象で、車の修理や全損補償はカバーされません。
したがって、車の損害は相手の任意保険から支払われます。ただしその際に補償されるのは「修理費」または「時価額(市場流通価格)」のいずれか安い方です。
「時価額」とは?車両保険金額とは別物
多くの方が誤解するのが、自身の保険証券に記載されている「車両保険金額」が相手保険から支払われると思ってしまう点です。
これは間違いで、相手保険から支払われるのは時価額であり、あなたの車両保険金額とは無関係です。たとえば車両保険金額が80万円でも、時価額が60万円と評価された場合、支払われるのは60万円のみです。
全損時の補償額の決まり方
事故によって車が「全損扱い」となる場合、次のような流れで支払いが行われます。
- 査定により時価額が決定される
- 事故車の「残存価値(スクラップ価格)」が差し引かれる
- その差額が補償額として支払われる
例:時価額70万円、残存価値10万円の場合 → 補償額は「70万円 – 10万円 = 60万円」
自分の車両保険を使うべき?
被害者側が過失0でも、相手保険の対応や査定額に不満がある場合、自分の車両保険を利用することも可能です。ただし、この場合でも「時価額」を上限として支払われる点は変わりません。
また、車両保険を使っても10:0事故であれば、等級ダウン(保険料の割増)は通常ありません。
実例:10:0追突事故の全損ケース
・信号待ち中に追突され、車は修理不能
・相手の保険会社から提示された補償額は市場価値で55万円
・自分の保険証券の車両保険は70万円だが、支払われるのは相手査定の55万円のみ
→ この場合、自分の車両保険で不足分を請求することも可能ですが、契約内容によります。
交渉が難しい場合は専門家のサポートを
相手保険会社の提示額に納得できない、交渉が進まないといった場合は、法テラスや弁護士を通じてアドバイスを受けるのも一つの手です。
また、損害保険に強い弁護士が在籍する事務所では、無料相談や着手金不要のケースもあるため、費用面の不安も軽減されます。
まとめ:補償金額は時価評価が基準、自車両保険との連携も鍵
信号待ちでの追突事故は過失ゼロであっても、補償の基準は相手保険の「時価評価」に基づきます。自身の車両保険の契約内容を再確認し、必要に応じて両保険を活用することで、納得のいく補償を受けましょう。