通勤途中の事故に遭った場合、「通勤労災」と「人身傷害保険」のどちらを使うべきか悩む方は少なくありません。特に、既往症の悪化や通院・休職が関係してくると、補償が認められるのか不安になるものです。本記事では、通勤事故における各種補償制度と申請の注意点について解説します。
■通勤労災として認められるケースと注意点
労災保険では、「通勤途中の事故」も補償の対象となります。ただし、業務との因果関係が明確でなければ認定されません。
今回のように解離性障害という既往症があり、それが事故をきっかけに悪化した場合、労災としての補償は症状によって判断されます。身体的な怪我が通勤中の事故によるものと診断された場合には労災認定されやすいですが、精神的な症状悪化については医師の意見や診断書が重要です。
■休業補償を受けるには「労務不能証明書」が必要
労災保険による休業補償(休業補償給付)を受けるには、医師の「労務不能証明書」が必要です。これがなければ、たとえ会社が休職を認めていたとしても、労災による補償が認められない可能性があります。
まだ労務不能証明書を取得していない場合は、主治医に相談し、事故の影響で就労が困難であることを具体的に診断書に記載してもらうようにしましょう。
■人身傷害保険とは?通勤労災との違い
人身傷害保険は、自動車保険の特約の一つで、自分自身の怪我や通院・休業損害を補償するものです。相手の過失割合に関係なく支払われるのが特徴です。
ただし、人身傷害では自由診療(整骨院など)やリハビリの内容に制限があることがあり、相手に過失がなければ補償が制限されるケースもあります。
■通勤労災と人身傷害保険は併用できる?
原則として、通勤労災と人身傷害保険の併用は可能ですが、二重に補償を受けることはできません(損益相殺の原則)。つまり、同じ治療費や休業補償を両方から受け取ることはできないため、申請前に保険会社や労働基準監督署へ相談し、調整を図ることが大切です。
たとえば、労災で認められない精神的悪化部分は人身傷害保険での補償を検討するといった使い分けも可能です。
■通院実績がない相手がいる場合の影響
事故の相手が通院していない場合、相手保険会社が「軽微な事故」と判断し、自己負担での治療になる可能性があります。これは保険会社の判断によるもので、「自由診療扱い」となることも。
その場合でも、医師の診断書と通院の必要性が明確であれば、保険会社に再度交渉する余地があります。主治医に客観的な所見を書いてもらうことが非常に重要です。
■まとめ:早めの相談と診断書取得が鍵
今回のように複雑な事情が絡む事故では、通勤労災と人身傷害保険を上手に使い分けることが重要です。
- 労災の適用には事故との因果関係と労務不能証明書が必須
- 人身傷害保険は相手の過失に関係なく補償されやすい
- 両者の使い分けと補償範囲の確認を怠らない
- 医師に診断書と必要な説明をしっかり求める
不安な場合は、労働基準監督署や労災保険の専門機関、保険会社の相談窓口を活用し、早期の対応を心がけましょう。