インターネット上での誹謗中傷が大きな社会問題となる中、未成年者による発信行為に関しても厳しい目が向けられています。特に刑事責任能力を有するとされる14歳以上の少年が関与した場合、法的責任だけでなく報道上の取り扱いについても関心が高まっています。本記事では、14歳以上18歳未満の未成年が誹謗中傷行為で刑事責任を問われた場合に「実名報道される可能性はあるのか?」という点について、法律・報道倫理・過去事例の観点から解説します。
少年法の基本:刑事責任能力と保護のバランス
日本の刑法では、14歳以上の未成年には刑事責任能力があるとされ、重大な犯罪については逮捕・送検・起訴といった通常の刑事手続きが取られる可能性があります。しかし一方で、少年法は未成年者の健全な育成を目的としており、その中で「実名報道の制限」も明確に定められています。
少年法第61条では、家庭裁判所に送致された少年や刑事裁判にかけられた少年の氏名・写真などを含む報道を、原則として禁じています。つまり、14歳以上であっても「少年」である限り、基本的には実名報道されません。
実名報道が許されるケースとは?
ただし、例外も存在します。たとえば、刑事事件として正式に起訴され、家庭裁判所から検察へ逆送されたケースでは、社会的影響の大きさなどを理由に一部メディアが実名報道を行うことがあります。これは少年法の趣旨と報道の自由の間で議論が分かれる領域です。
また、ネットメディアやSNSでは、マスメディアが守る「報道倫理」を無視して個人情報を晒す行為が散見されますが、これは違法となる可能性があるため注意が必要です。
実名報道の過去事例:何が基準となったか
過去に少年による重大事件(殺人や重大傷害等)が起きた際に、一部週刊誌やネットニュースが「実名報道」に踏み切ったケースがあります。これらは通常、
- 事件の社会的関心が極めて高い
- 被害者の遺族が実名報道を希望している
- 加害少年が18歳以上である
といった要素が関係しています。14歳〜17歳の誹謗中傷事件では、こうした条件に当てはまることは稀であり、実名報道されることは非常に限定的です。
誹謗中傷事件での民事・刑事責任とその影響
誹謗中傷は内容によって、名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)、業務妨害罪(刑法233条)などが適用される可能性があります。14歳以上の少年が刑事責任を問われることもあり、その場合、保護観察処分や少年院送致の可能性もあります。
さらに、民事では被害者から損害賠償請求を受けることもあり、親権者(保護者)も責任を負うケースが一般的です。つまり、実名報道されなくとも、社会的・法的影響は大きいと言えるでしょう。
報道以外の影響:進学・就職・再犯リスク
たとえ実名が公表されなかったとしても、逮捕歴や補導歴は進学や就職に影響する場合があります。また、匿名であっても「ネット特定班」により個人が特定され、SNSや掲示板などで情報が拡散されると、社会的信用や人間関係に深刻なダメージを与える可能性があります。
こうした情報拡散は名誉毀損やプライバシー侵害として新たな法的トラブルにつながる場合もあり、加害者・被害者ともに注意が必要です。
まとめ:刑事責任能力と報道の扱いは別の問題
14歳以上であれば刑事責任を問われる可能性はありますが、少年法の原則により、通常は実名報道されません。ただし、事件の重大性や社会的影響などによっては例外的に報道されることもあり得ます。報道の有無にかかわらず、誹謗中傷は加害者に大きな責任が伴う行為であり、未成年であってもその影響は深刻です。教育機関や保護者が、ネット上の発信行為のリスクをしっかりと伝えることが何より重要です。