偽卒業証書と証拠保全の実態とは?なぜ動かないのかを法的観点から解説

近年、SNSや報道などで耳にする機会が増えた「偽卒業証書」問題。しかしながら、明らかな疑義があるにも関わらず、証拠保全などの具体的な法的手続きに進まないケースが少なくありません。本記事では、偽卒業証書における証拠保全の実態と、なぜ実行されないのかという背景について解説します。

そもそも偽卒業証書とは何か

偽卒業証書とは、実際には卒業していないにも関わらず、卒業したことを装って発行された証書や、それに準じた書類を指します。大学や専門学校などの名称が記載され、外見上は本物と区別がつきにくいケースも存在します。

こうした偽造は、公文書偽造罪私文書偽造罪などに該当する可能性があり、発行者・使用者ともに法的責任を負うリスクがあります。

証拠保全とは?いつ・なぜ必要なのか

証拠保全とは、裁判に先立って証拠が失われたり改ざんされたりすることを防ぐために、裁判所の命令を得て文書や物証を確保する手続きのことです(民事訴訟法第234条以下)。

偽卒業証書の場合、「卒業証書そのもの」や「大学の在籍情報」が主な対象となります。証拠保全は、偽造の立証において極めて有効な手段とされます。

なぜ証拠保全が行われないケースがあるのか

一見すると明確な違法行為に見えるにもかかわらず、証拠保全や訴訟手続きに進まない背景には、以下のような事情があります。

  • 名誉毀損やプライバシーへの配慮:公人でない限り、本人の同意なしに在籍確認などを公的に行うことは困難です。
  • 政治的・社会的圧力:著名人や組織が関与している場合、調査そのものが抑制されることがあります。
  • 関係者の協力不足:大学や教育機関が「在籍情報は開示しない」との立場をとることが多く、証拠の取得が困難になります。

実際に証拠保全が行われた例

過去には、就職活動における学歴詐称が発覚し、企業側が退職勧告を行う前提で大学への確認を行ったケースがあります。企業や官公庁であれば、在籍照会が正式に通ることもあります。

一方で、民間人や第三者が行う場合、裁判所を通じての証拠保全申立てが事実上の前提となるため、法的ハードルは高いのが実情です。

偽卒業証書の対応は誰がすべきか

制度的な対応としては、以下のような主体が関与することが想定されます。

  • 文部科学省:不正行為の実態調査や指導
  • 大学側:発行履歴の確認と照会への回答
  • 司法当局:告発や刑事訴追を受けての捜査

一般市民が単独で行動するには限界があるため、報道機関や弁護士と連携した対応が必要です。

まとめ:証拠保全が進まないのは法的・制度的な壁による

偽卒業証書が疑われるにも関わらず、証拠保全や法的措置に発展しない背景には、個人の権利保護や組織的な抵抗、手続き上の制限が関わっています。真相を明らかにしたい場合は、安易な憶測で動くのではなく、法的助言を得ながら慎重に手続きを進める必要があります。

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