SNS上の小額詐欺と高額な示談金請求―法律上のリスクと正しい対応方法

近年、TikTokやInstagram、X(旧Twitter)などのSNSを利用した詐欺まがいの行為が後を絶ちません。その中でも、”倍増送金詐欺”と呼ばれる手口が問題となっており、少額を騙し取る一方で、被害者から高額な示談金を請求されるケースも発生しています。本記事では、法律的な観点からこのようなトラブルの構造と対応策をわかりやすく解説します。

「倍増詐欺」とは何か?

倍増詐欺とは、SNS上で「送金してくれたら倍にして返す」と投稿し、実際には返金しないまま金銭を受け取る手口を指します。PayPayなどの個人間送金機能を悪用したものが多く、10円~数百円といった少額でも、詐欺罪の構成要件に該当する可能性があります。

金額が少ないからといって「冗談」や「軽いノリ」で済まされることはなく、受け取った側に詐欺の故意(だます意図)があれば、刑法第246条に基づく詐欺罪に問われることがあります。

被害者から50万円の示談金請求は正当か?

民事的には、被害者は加害者に対して損害賠償請求(示談金)を求めることが可能です。しかし、その金額には社会通念上の妥当性が必要です。10円の被害に対して50万円という金額は、通常の裁判でも著しく過大であると判断される可能性が高く、認められないのが一般的です。

示談金には「相手が応じて初めて成立する」という原則があり、請求されたからといって必ず支払う義務が生じるわけではありません。

「告訴状」や「発信者情報開示命令」画像の送付は脅迫か?

最近増えているのが、告訴状や法的書類の画像をDMなどで送り付け、支払いを強要するケースです。これは民事手続きをちらつかせた心理的圧力による脅迫的行為に該当する恐れがあります。実際に告訴するには警察への正式な手続きや、裁判所への申立てが必要であり、DMに送られてきた画像だけでは法的な効力はありません

また、これらの手段を悪用してお金を巻き上げようとする行為は「恐喝罪」や「強要罪」に問われる可能性もあるため、逆に相手が違法行為をしているケースもあります。

加害者としての責任と正しい対応

「自分が悪いことをした」と反省していても、相手の請求が過剰であれば、それに応じる必要はありません。まずは一切の送金を停止し、証拠(DMや画像)をスクリーンショットで保存しておきましょう。その上で、警察署のサイバー犯罪相談窓口や弁護士に相談することが重要です。

また、被害者に謝罪の意を伝え、今後の対応を第三者を通じて進めることがトラブルの長期化を避けるカギとなります。SNS上でのやり取りを個人間で続けることは避けましょう。

法的支援を受けるための相談窓口

以下の機関が、被害者・加害者双方に対応可能な支援を提供しています。

法テラスでは収入条件に応じて無料で弁護士相談が可能な場合もあり、経済的負担を抑えつつ対応が進められます。

まとめ:小さな過ちでも冷静な対応を

SNSを通じた倍増詐欺は、たとえ金額が小さくても刑事事件化するリスクがある行為です。しかし一方で、被害者側の過剰な請求や脅しのような対応も問題がある場合があります。大切なのは、冷静に証拠を確保し、法的専門家の助けを借りて正しい道筋で解決を目指すことです。自己判断で送金を続けたり、感情的に対応したりせず、まずは相談を。

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