ニュースでよく見かける「逃走車両が一般車に衝突」「無関係な通行人が巻き込まれた」という事故。加害者が無免許・無保険・飲酒運転などで逃走中の場合、被害者は一体どこから補償を受けられるのか?泣き寝入りにならないための制度や対応策をわかりやすく解説します。
逃走車両による事故の加害者が無保険の場合のリスク
交通事故の加害者が任意保険未加入、または賠償能力がない場合、被害者は損害回復が困難になる恐れがあります。特に逃走中の運転者は、飲酒・無免許・盗難車などにより、損害賠償義務を果たせないケースが多発しています。
現実には、加害者が捕まっても「支払能力がない」「資産がない」などの理由で、請求しても実質的に何も得られないことがあります。こうした場合にこそ知っておくべきのが、公的な救済制度です。
政府保障事業(自賠責保険)による救済
「加害者が不明」「無保険車による事故」など、通常の自賠責保険ではカバーできない場合でも、被害者を救済するための制度として、国土交通省が所管する政府保障事業があります。
これは、自賠法に基づいて設けられた制度で、加害者が保険未加入・所在不明でも、人身事故に限り最大4,000万円(死亡)、後遺障害や治療費も一定額まで補償されます。物損は対象外ですが、治療費や慰謝料、逸失利益の補償を受ける道が開かれます。
物損についてはどう対応する?
政府保障事業は人身事故のみ対象のため、破損した車両や物品への補償は受けられません。この場合、次のような手段があります。
- 自身の車両保険(車両保険・対物超過修理費用特約など)を活用
- 弁護士費用特約があれば、損害賠償請求を弁護士に委任
- 少額訴訟や民事訴訟で加害者に直接請求
ただし、加害者に支払い能力がなければ、判決が出ても現実的な回収は困難なケースが多いのが実情です。
実際の被害事例と対応例
たとえば、大阪市内で警察から逃走中の車両が赤信号を無視して交差点に突入し、信号待ちの車両に衝突したケースでは、被害者は首のむち打ち・車両全損の被害を受けました。加害者は盗難車を無免許運転しており保険は無加入でしたが、政府保障事業から傷害部分の補償を受けることができました。
物損については、自身の加入していた車両保険を使って対応し、後に弁護士を通じて加害者に求償を行ったという流れです。
警察の責任は問えるのか?
「警察の追跡により事故が起きたのだから、警察にも責任があるのでは」と思う方もいますが、現行法では原則として警察に賠償責任は認められていません。ただし、違法・不当な追跡であったと認定された場合には、国家賠償法に基づく請求ができる可能性もゼロではありません。実際には非常に稀で、立証のハードルも高いとされています。
まとめ:泣き寝入りしないためにできること
逃走中の無保険車による事故に巻き込まれた場合でも、すぐに諦める必要はありません。政府保障事業による人身補償や、自身の加入する保険の各種特約、法的手続きによって一定の補償を得ることは可能です。
事故後はまず警察に届出を行い、事故証明を取得。その後、保険会社や弁護士に相談して、利用可能な制度を最大限活用することが被害回復への第一歩です。