相続放棄と“現に占有”の関係とは?実家に置いた私物が招く落とし穴に注意

相続放棄をすれば遺産や借金などすべてを受け継がずに済むと思っている方も多いでしょう。しかし、実際には相続放棄後でも注意しなければならないケースがあります。特に「実家に自分の私物を置いていた場合」、思わぬ形で“現に占有している”と見なされる可能性があるのです。

相続放棄の基本ルールと「占有」の意味

相続放棄をすると、最初から相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。ただし、放棄前に被相続人の財産を事実上占有・処分した場合、「単純承認した」と判断されることがあります(民法第921条)。

ここで問題になるのが“現に占有”の解釈です。実家に置いてあったギターなどが、自分の所有物であっても、他の財産と一体として管理していたと見なされると、管理責任を問われる可能性が出てきます。

私物を実家に置いていた場合の法的リスク

被相続人と同居していなかったとしても、遺品の中に自分の所有物が混在している状況では、誤って遺産と一体的に扱ってしまうリスクがあります。たとえば、自分のギターを取り出す際に他の遺品を整理した場合、それが遺産の“管理”と判断されるおそれがあります。

つまり、相続放棄を前提にするなら、私物の取り扱いにも細心の注意が必要となります。自分の財産だけを分けて持ち出したとしても、その行為が全体の財産処分と見なされることがあるからです。

「管理義務」が発生するのはどんな時?

相続放棄をしても、放棄をするまでは法定相続人であるため、相続財産の管理義務が一時的に生じます(民法第940条)。これは、財産の毀損や散逸を防ぐための一時的な保全義務で、放棄後に管理を続けると「単純承認」とされるおそれがあります。

よって、放棄する意思がある場合は、家庭裁判所に放棄申述を行うまでの行動も慎重にすべきです。

リスクを回避するための具体的対策

  • 自分の私物が実家にある場合、放棄前には動かさない
  • どうしても必要な場合は弁護士の立会いや文書記録を残す
  • 相続放棄後に財産へ接触しないよう徹底する
  • 相続放棄の前後は全て行動記録を残しておく

相続放棄の手続き中に物を持ち出すと、後でトラブルの火種になりかねません。とくに不動産内の動産(家財道具など)は境界があいまいであるため、誤解を招きやすい部分です。

相続放棄を安全に進めるには専門家の力を

相続放棄は比較的簡単に思えるかもしれませんが、行動一つで放棄が無効になることもある繊細な手続きです。とくに実家にある私物や共有空間の扱いについては、相続に強い弁護士や司法書士に早めに相談しておくことが、後悔しない相続対策に繋がります。

また、家族間で財産に対する認識が異なる場合には、事前に「これは私の所有物である」と示す意思表示や証明書類(レシート・購入記録など)も用意しておくとトラブルを避けやすくなります。

まとめ:実家に私物があっても安心して相続放棄するために

  • 相続放棄中・後は被相続人の財産に触れないのが鉄則
  • 自分の私物の持ち出しも状況次第で「占有」と見なされる
  • 疑わしい行動を避けるには専門家のアドバイスが有効
  • 放棄前の慎重な行動と証拠記録がトラブル回避のカギ

相続放棄は“しなかった”より“慎重にした”方が確実にリスクが少ない選択です。事前にできる備えをして、円滑な手続きを目指しましょう。

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