刑事事件の実務では、令状の扱いやおとり捜査による家宅侵入など、手続の正当性が争点になることも多いものです。本記事では、捜索差押許可状の呈示タイミングや違法収集証拠への主張、おとり捜査や令状呈示の例外的取扱いについて、条文・判例も交えて整理します。
①令状の呈示はいつ行われるべきか?原則と例外
刑事訴訟法110条・222条により、捜索・差押えを行う前に、処分を受ける者に令状を呈示するのが原則です。これは、捜査の公正を担保し、人権を守る趣旨があります:contentReference[oaicite:0]{index=0}。
ただし、最高裁平成14年10月4日判決で、証拠隠滅の恐れが高い場合には、実施後であっても遅滞なく呈示すれば例外的に認められるとされています:contentReference[oaicite:1]{index=1}。
②弁護人が主張すべき法的構成とは?
弁護人は、不呈示や呈示遅延があれば「違法収集証拠排除」の主張をすべきです。刑訴法は違法に取得された証拠を排除できると規定しており、令状呈示不備は典型的な違法収集に該当します:contentReference[oaicite:2]{index=2}。
また、Aが逮捕状なしに制圧された場合には、不法侵入や違法制圧を争点に、「令状前の強制入室・身体拘束が違法」として証拠排除を主張できます。
③おとり捜査と逮捕状なし制圧・令状呈示の適法性
・おとり捜査による入室
警察がおとり役を使う捜査自体は憲法・刑訴法上認められていますが、入室後の行為が違法な強制に該当しないかは注意が必要です。事前に逮捕状が無い場合、明示的な任意同意がなければ不当侵入になる可能性があります。
・逮捕状なし制圧
Aに対して逮捕状がないまま踏み込んで制圧する行為は、現行犯や緊急性が無い限り適法とはなりません。刑訴法や判例では、令状を得る前に強制的に身体拘束する根拠が必要とされています:contentReference[oaicite:3]{index=3}。
・令状呈示の遅延呈示
X巡査が呈示せずに制圧後に提示した場合、それが証拠隠滅防止などの正当事由に該当するかが争点です。さらに呈示の遅れが合理的であっても、遅滞なく呈示しなければならず、その態様が適法かどうか精査されます:contentReference[oaicite:4]{index=4}。
結論まとめ
- 令状は原則「執行前」に呈示すべきもので、例外は証拠隠滅の恐れがある場合のみ。
- 呈示遅延や不呈示があれば、違法収集証拠排除の主張が可能。
- おとり捜査による任意入室・身体拘束には逮捕状や緊急性が必要。
- 制圧後令状呈示の場合は「証拠確保の合理性」「呈示のタイミング」の両方が検討される。
論点が多岐にわたる本事例ですが、令状呈示の原則と例外、証拠排除構成、おとり捜査や制圧行為の適法性などを順序立てて整理すれば、設問1~3に対応した論理的・構成的解答ができます。