交通事故で自車が全損となった場合、車両保険を使えば補償を受けることができます。さらに相手にも過失がある場合、「相手の保険からも補償金をもらえるのでは?」と考えるのは自然な流れです。本記事では、車両保険による全損補償と、相手の対物賠償保険による支払いの関係性について、過失割合や補償額の観点から詳しく解説します。
車両保険の「全損時倍額補償」とは?
多くの自動車保険には、車両保険の特約として「全損時倍額補償」や「新価特約」などがあります。これは、全損扱いとされた場合に通常の保険金額(たとえば100万円)を超えて、最大で2倍(200万円)まで補償されるという制度です。
この補償は、あくまで「契約者自身の損失」に対して保険会社が支払うものであり、相手の責任とは関係なく適用されます。
過失相殺がある場合、相手の保険からも補償される?
事故の過失割合が50:50だった場合、自分の損害額に対して相手側の過失分(この場合50%)は、相手の保険会社が支払うのが基本的な考え方です。ただし、すでに自分の車両保険を使って補償を受けている場合、原則として「二重取り」はできません。
なぜなら、自動車保険は「実損害の補填」が目的であり、損害以上に受け取ることは想定されていないからです。つまり、200万円の全損補償を受け取った後に、さらに相手の対物保険から追加で50万円を受け取る、ということは基本的にはできません。
相手の過失分はどこに支払われるのか?
相手に50%の過失があるとした場合、その損害分は理論上相手の保険会社が負担することになります。しかし、自分が加入する保険会社がすでに補償(200万円)を済ませている場合、自分の保険会社が「求償」という形で相手の保険会社にその50%(100万円)を請求するのが通常の流れです。
このため、最終的な支払いの負担者は相手側保険会社でも、あなたが受け取れる金額はあくまで保険金額の上限(このケースでは200万円)までということになります。
事故における「損害」の定義と補償上限
保険で補償される「損害」とは、基本的に修理費または時価額を上限とする金額であり、それ以上の金額を請求・受け取りすることはできません。たとえば車両の時価額が150万円であれば、倍額補償の特約があっても、相手の保険からさらに上乗せで補償を受けることは不可能です。
また、時価額や損害額が200万円を下回る場合は、実際の補償もその金額までとなる可能性があるため、契約内容の詳細や査定結果に注意が必要です。
例で見る支払いの流れと総額
仮にあなたの車の時価額が100万円、全損扱いによる倍額補償が200万円。事故の過失割合が50:50で、相手にも損害があるとします。この場合。
- あなたの損害額:200万円(特約適用)
- 保険会社が支払う:200万円
- そのうち相手保険会社へ求償:100万円(あなたの保険会社が相手保険会社に請求)
- あなた自身が追加で受け取る金額:0円
つまり、補償総額は変わらず、相手からもらえる金額が上乗せされることはないのです。
まとめ|全損補償と相手保険の関係を正しく理解しよう
車両保険による全損倍額補償を受けた場合でも、相手の保険から過失分を別途受け取ることは基本的にできません。相手の過失分の負担は、あなたの保険会社と相手の保険会社の間で処理されるため、あなたが受け取る総額は契約で決まっている上限までとなります。
誤解しやすいポイントではありますが、事故後の保険対応においては、補償の性質と請求の仕組みを冷静に理解することが重要です。