交通事故において、被害者側に過失が一切ない「10対0」の事故は稀ではありません。このような状況で相手が直接謝罪に来た際、「慰謝料を個人的に受け取っても問題ないのか?」と悩む方も多いでしょう。この記事では、被害者が知っておくべき慰謝料とその受け取り方について、法的な視点から解説します。
10対0の「貰い事故」とは?
「10対0」の事故とは、加害者に100%の過失がある事故を指し、追突事故や信号無視などが典型例です。被害者に非がないため、損害賠償はすべて加害者(もしくはその保険会社)が負担するのが原則です。
このような場合、被害者は加害者側の任意保険会社とのやりとりだけで補償を受けるケースが多くなります。
慰謝料の本来の請求先は誰?
交通事故における慰謝料は、通常は加害者の自動車保険(任意保険)を通じて請求されます。個人的に現金などで直接受け取ることも違法ではありませんが、注意が必要です。
なぜなら、のちのちの損害賠償請求との整合性が取れなくなり、トラブルになる恐れがあるためです。
直接慰謝料を受け取る際のリスク
たとえば、後から保険会社に対して通院治療の慰謝料や物損の請求を行った場合、「すでに加害者本人から慰謝料を受け取っているのでは?」とみなされ、補償が減額されるケースもあります。
また、現金の授受について記録を残していないと、後日「そんなお金は渡していない」と主張される可能性もあるため、領収書や示談書を必ず交わす必要があります。
慰謝料を受け取るなら示談書を作成しよう
示談書とは、当事者間で合意した内容を文書化したものです。もし直接お金を受け取る場合は、金額、受け渡し日、双方の署名・捺印を記載した文書を用意しましょう。
この際、「この金額をもって慰謝料の支払いは完了とする」などの文言を加えることで、将来のトラブルを防げます。
実例:直接慰謝料を受け取った被害者のケース
40代男性がコンビニ駐車場で10対0の追突被害に遭い、加害者がその日のうちに訪問。保険会社の対応が遅れていることを理由に、加害者から3万円の慰謝料を直接受け取りました。
このとき、簡単な示談書を作成しておいたことで、後日問題になることなく、保険会社からも別途治療費の支払いを受けることができました。
まとめ:直接の慰謝料受領は慎重に
10対0の事故で加害者が謝罪とともに慰謝料を申し出るケースはありますが、必ず示談書を作成して法的に保全することが大切です。
被害者としては感情的に許したい気持ちもありますが、法的な責任関係を曖昧にすると、思わぬ不利益を被る可能性があります。困ったときは弁護士や交通事故専門の相談窓口にアドバイスを求めるのが安心です。