飲酒運転と過失割合の関係|酒気帯びや酒酔いが被害者でも過失は加算されるのか?

交通事故における過失割合の算定では、飲酒運転が重大な要素として評価されます。では、被害者側が飲酒していた場合でも、その過失が加算されることはあるのでしょうか?この記事では、酒気帯び・酒酔いと民事責任における過失割合の関係について解説します。

道交法違反と過失は別概念

まず前提として、道路交通法違反=自動的に民事上の過失になるわけではありません。あくまで民事責任では、「事故発生に寄与したかどうか」「注意義務違反があったかどうか」で過失の有無が判断されます。

したがって、違反は「過失推認の根拠」にはなりますが、単独で直ちに過失を構成するとは限りません。

被害者が飲酒していた場合の過失加算

実務上、被害者が酒気帯び・酒酔い状態だった場合、+10%〜+20%の過失加算が認められることがあります。ただし、それは「被害者の飲酒が事故に影響を与えたと認められる場合」に限られます。

たとえば以下のような事例です。

  • 歩行者が酒に酔って車道をふらついていた
  • 自転車が蛇行運転していた
  • 信号無視・横断禁止を飲酒状態で行っていた

このようなケースでは「飲酒による判断力の低下が事故の一因」とされ、過失割合に反映されます。

停止中の被害者が飲酒していた場合

質問にあるように、「信号停止中の車両に後方から追突された」場合、その被害者が酒気帯び状態であっても、通常は過失加算されません。なぜなら、被害者側の飲酒が事故発生に何ら寄与していないからです。

このような状況では、「酒を飲んでいたか否か」と事故の因果関係がないため、民事上の過失にはつながらず、通常は0:100となるのが原則です。

過失割合と刑事・行政責任は別問題

被害者に酒気帯び運転の道交法違反があったとしても、それは行政処分や刑事処分(免停・罰金など)の対象とはなり得ますが、民事損害賠償とは切り離されて考えるべきです。

あくまで「事故に対する寄与度」が民事上の過失割合を左右するため、単なる違反だけでは不利な評価とはなりません。

参考:裁判例に見る判断の傾向

東京地裁平成27年判決では、酒酔い運転中の被害者が、赤信号停止中に追突された事案において「飲酒の影響が事故に寄与していない」と判断され、過失割合は被害者0%とされました。

一方、夜間に無灯火・酒酔いで車道を逆走していた自転車に衝突した事例では、30%以上の過失が認定された例もあります。

まとめ

道交法違反と民事上の過失は密接に関係しますが、別個に判断されるものです。飲酒状態であっても、事故との因果関係がなければ、民事責任(過失割合)には反映されません。

特に「信号停止中」など被害者に運転操作の関与がなかった場面では、飲酒の有無は民事過失に影響しないのが原則です。

道交法違反=過失という単純な図式ではなく、「その行為が事故にどれだけ関与したか」を冷静に見極める視点が大切です。

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