薬局では、薬の在庫管理や販売記録の正確性が非常に重要です。しかし現場では、購入されたはずの薬の所在が不明になるというトラブルもまれに発生します。この記事では、薬が「購入された形跡があるのに所在が不明」というケースにおいて、どのように対応すべきか、法的・実務的な観点から解説します。
薬が行方不明になったときに考えられる原因
まず、薬が行方不明になった原因を洗い出す必要があります。主な可能性としては以下のようなものがあります。
- 購入者が持ち帰ったが忘れている、または誤って別の場所に置いた
- レジでの打ち間違いや販売処理のミス
- 薬剤師・従業員による記録漏れ
- 実際には販売されていないが、伝票だけが先に処理された
- 意図的な持ち出し(横領)など不正行為
このような事態では、関係者の証言や監視カメラ、販売管理システムのログなどを確認することが初動対応として重要です。
調剤薬ではない市販薬でも記録の有無が鍵に
調剤薬であれば調剤録や処方箋管理が必須ですが、市販薬(OTC医薬品)の場合は記録義務はそこまで厳しくないため、トラブル時の追跡が難しくなります。とはいえ、POSレジに販売記録が残っていれば、販売時間帯や担当者を絞って状況を再確認することができます。
また、薬の種類が一般的な胃薬のようなものであっても、店頭販売記録との照合や在庫数との乖離があれば、ヒューマンエラーの可能性が高まります。
責任の所在と追及できる範囲について
薬局内での紛失に関しては、まず管理者が調査を指示し、従業員にヒアリングを行います。重要なのは「調剤された形跡がない」「返却された記録もない」「持ち帰り証拠もない」この三つが揃っている場合です。
このような場合は、刑事責任を問うには証拠が不十分なため、懲戒や処分なども慎重に行う必要があります。あくまで内部管理上の問題として扱い、再発防止策の策定を優先しましょう。
第三者や外部に相談する必要があるケース
もし頻繁に薬の所在が不明になるなど、再発性のある問題が確認された場合、監査法人や保健所、あるいは薬剤師会など第三者機関への相談も検討すべきです。
万一、不正行為の疑いが強まる場合には、防犯カメラの確認や、顧問弁護士などへの相談も選択肢となります。
類似事例とその対処法
ある調剤薬局では、販売記録と在庫数が合わない事態が発生したため、1日ごとの薬品棚卸しを実施し、管理体制を強化することで再発を防止しました。
また別の店舗では、カウンター内で薬が放置され、閉店後に他の従業員が誤って片付けてしまった例もありました。原因特定には従業員間の情報共有が重要です。
まとめ:まずは事実関係を明確にし、再発防止を
薬の所在が不明になるトラブルは、たとえ高価な薬でなくても信用問題に発展しかねません。証拠が不十分なまま誰かを追及することは避け、まずは記録・ヒアリング・映像確認などを通じて、事実関係を冷静に整理しましょう。
その上で再発を防ぐための仕組み作り(管理マニュアル、Wチェック体制など)が何より大切です。