スーパーマーケットなどで働く一部の従業員が、値引き商品を閉店前にキープし、タイミングを見てさらなる割引を受けて購入する行為について、不公平感や倫理的疑問を感じる人は少なくありません。この記事では、こうした行動が法律に触れるのかどうか、また企業や社会的な観点からどう評価されるべきかを解説します。
従業員による割引商品のキープは違法か?
結論から言えば、従業員が店の規則に反して割引商品を事前に取り置きし、他の客の購入機会を奪うこと自体は、法律違反とまでは言えないケースが多いです。ただし、これには重要な前提があります。
たとえば、会社の就業規則や内部規定で「従業員の割引商品取り置き禁止」などの明確な定めがあり、それに違反した場合は、服務規律違反として懲戒処分の対象になる可能性があります。
刑法との関係性:横領や背任に該当するか?
このような行為が刑法上の「横領罪」や「背任罪」に該当するかはケースバイケースです。商品はまだ誰の所有物でもなく、売買契約も成立していない段階であるため、通常は横領には当たらないとされます。
しかし、例えば上司と共謀して仕入れ価格以下の不当な価格で購入していた場合など、明らかに店舗に損害を与える意図があると判断された場合には、業務上横領や背任罪が成立する余地が出てきます。
企業の内部ルールと処分の可能性
多くのスーパーでは、「従業員の勤務中の私的買い物の禁止」や「割引後の商品は店頭に陳列された後でのみ購入可能」といった内部規定が存在します。これらに違反した場合は、注意・減給・出勤停止・懲戒解雇といった社内処分が課される可能性があります。
実際に、内部通報制度を利用して従業員の不正購入行為が発覚し、処分された事例も報告されています。
倫理的な問題と顧客への影響
この種の行動は、消費者との信頼関係を損なう要因になります。特に、他の顧客が本来購入できたはずの商品を従業員が優先的に確保することは、不公平と受け取られやすく、店舗の評判にも悪影響を及ぼしかねません。
また、常連客や高齢者が値引き商品を頼りにしている地域密着型のスーパーでは、こうした不正がより深刻に受け止められる傾向にあります。
対処法:問題をどう報告するか?
もしこのような行為を目撃し、正当性に疑問を感じた場合は、店舗の本社や運営会社のお客様相談室に匿名で通報することが有効です。
また、証拠となる写真や日付、時間、状況のメモを残しておくことで、企業側が事実確認をしやすくなります。
まとめ:違法性は薄くとも対処は可能
割引商品をキープして自分だけ得をする行為は、たとえ違法ではなくとも企業倫理や職業モラルに反します。
こうした行動を見過ごすことで、健全な店舗運営が損なわれる恐れがあるため、冷静に対処し、必要に応じて適切な通報ルートを使うことが、消費者としての一つの正しい行動と言えるでしょう。