日常生活の中で突然の事故に遭うことは誰にでも起こり得ます。とくに犬に噛まれるなどの事故は、思わぬケガや精神的ショックを引き起こすこともあります。今回は、配達中に犬に噛まれて負傷したケースを想定し、慰謝料や損害賠償の請求方法と相場、対応手順について解説します。
犬に噛まれた事故は「不法行為」として損害賠償請求が可能
民法709条によれば、他人に損害を与えた者は賠償責任を負います。さらに、民法718条では「動物の占有者(飼い主)」がその動物によって他人に損害を与えた場合に責任を負うと規定されています。したがって、犬の飼い主には法的責任が発生します。
今回のように、新聞配達中という業務中の事故であっても、犬の管理不備による被害であれば、損害賠償や慰謝料の請求が可能です。
まず取るべき対応|証拠の確保と記録
犬に噛まれた場合、まずは病院での診断と治療が重要です。その際には診断書を必ず取得しましょう。また、以下のような証拠を集めるとより有利になります。
- 噛まれた部位の写真
- 破れたズボンなどの物的損傷の記録
- 事故当時の状況メモや目撃者の証言
- 警察への被害届受理番号
こうした証拠は、後の損害賠償交渉や裁判において有効な資料となります。
慰謝料・損害賠償で請求できる内容
慰謝料および損害賠償で請求できる主な内容は以下の通りです。
- 治療費:通院にかかった医療費全般
- 通院交通費:病院への往復にかかった費用
- 破損物の修理・購入費:破れたズボンや靴など
- 休業損害:業務ができなかった期間の損失
- 慰謝料:精神的苦痛に対する損害
特に傷跡が残る場合や、被害者が女性・未成年などの場合には慰謝料が高額になる傾向があります。
請求金額の相場とは?
実際の慰謝料・損害賠償の金額はケースによって異なりますが、以下は一例です。
- 軽度の咬傷(通院1~2回):慰謝料3万円前後
- 中程度の傷・痕跡あり(通院数回~1ヶ月):10万~30万円
- 傷跡が残り、精神的苦痛が大きい場合:50万円以上もあり得る
上記に加えて、治療費や物損などの実費を合算して請求する形となります。
損害賠償の請求方法と話し合いの進め方
まずは飼い主と穏便に話し合い、必要な費用や慰謝料について説明しましょう。その際には、書面(示談書)で合意を残すことが大切です。
話し合いが難航した場合や飼い主が支払いを拒否する場合は、法テラスや弁護士へ相談しましょう。場合によっては民事調停や訴訟も視野に入ります。
損害保険やペット保険の確認も
犬の飼い主が加入している火災保険やペット保険には、個人賠償責任保険が付帯していることが多く、これを利用して補償が行われるケースもあります。
飼い主が「保険で支払うので少し待ってほしい」と伝えてきた場合は、保険会社名と担当者を確認し、連絡先と対応状況を把握しましょう。
まとめ|早めの証拠確保と冷静な対応がカギ
犬に噛まれた事故は、明確に飼い主に責任があると認められるケースが多いため、泣き寝入りせずにしっかりと対応することが重要です。まずは証拠を確保し、医師の診断書や警察への届出を済ませたうえで、冷静に話し合いを進めましょう。
示談書の作成や適正な請求額の見積もりには、法的知識が必要な場面もあるため、不安な場合は法テラスや弁護士に相談することをおすすめします。