刑事事件で逮捕・勾留された場合、弁護士の選任は重要な権利の一つです。特に経済的に困難な状況にある方でも、法テラスを通じて国選弁護人を利用できる仕組みが用意されています。本記事では、国選弁護人制度の条件や申請方法、そして生活困窮者への配慮について詳しく解説します。
国選弁護人とは?私選弁護人との違い
国選弁護人とは、被疑者・被告人に弁護士がつくべきと判断された際、国が費用を負担して選任する弁護士のことです。自ら雇う「私選弁護人」とは異なり、一定の要件を満たせば、費用を気にせず弁護を受けることが可能です。
刑事事件の被疑者段階(逮捕・勾留)でも、勾留決定後に申請が認められると国選弁護人が付きます。これは刑事訴訟法に基づく制度で、被疑者の権利を守るために不可欠な制度です。
申請に必要な経済的条件
原則として、資力(預貯金・収入)が一定額以下であれば、国選弁護人の利用が認められます。具体的には、目安として「預貯金50万円以下」が基準とされています。
そのため、生活費程度の預金(例:50万円)しかない方は、国選弁護人の対象になりやすいといえます。生活困窮や精神疾患による就労困難なども、審査において考慮される可能性があります。
申請の流れと注意点
勾留決定が出た時点で、裁判所が国選弁護人を選任するかどうかを判断します。申請は弁護士会や留置所を通じて行われます。
自分から積極的に申請することが可能であり、留置所内でも職員に申し出ることで手続きを進めてもらえます。家族に頼る必要はありません。
法テラスの「被疑者援助制度」も併用可能
国選弁護人の対象外であっても、法テラスの「被疑者援助制度」を活用することで弁護費用の立替払いが可能です。これは無職や低所得者、精神疾患で安定収入が得られない方にも広く利用されています。
申し込み後、法テラスが審査を行い、通院歴や家族構成、親の支援可否なども含めて支援可否が判断されます。法テラス公式サイトでは、詳細なガイドや申込書のダウンロードも可能です。
実例:50万円の預金しかない独身男性の場合
例えば、会社を辞職し、精神疾患で通院中の独身男性(預貯金50万円)が勾留されたケースでも、国選弁護人が選任された実例は多数あります。親と同居していても、親の援助を明確に受けられない事情がある場合は本人の資力で判断されます。
また、精神的に不安定な状況下では、弁護士の存在が精神的な支えになることも多く、国選制度はそのような人々のためにも設けられています。
まとめ|経済的に困窮していても諦めないことが重要
預金が50万円程度、職を失った状態、精神疾患の治療中であっても、国選弁護人の選任や法テラスの支援は受けられる可能性があります。「頼れる人がいない」状況でも、制度を通じて法的支援を受けることは可能です。不安なときほど、まずは情報を集め、早めに申し出ましょう。