万が一の交通事故のあと、混乱して不適切な対応をしてしまうことは誰にでもあり得ます。しかし、後から保険に加入して虚偽の申告をしてしまうと、重大な法的リスクを伴うことがあります。この記事では、後から保険に加入して虚偽申告をした場合の法的リスクや、保険会社から刑事告訴される可能性について、具体的に解説します。
事故後の保険加入と虚偽申告は詐欺にあたる可能性
事故発生後に加入した保険で、あたかも事故後ではないかのように申告し保険金請求をする行為は、保険会社に対する詐欺未遂や詐欺罪に該当する可能性があります。
保険契約は「偶発的な事故」に備えるものです。すでに発生している事故に対して保険を使おうとする行為は、保険の趣旨に反しており、法的には「故意に保険事故を偽って申告した」とみなされます。
保険調査員は詳細に調査を行う
保険会社は保険金を支払う前に、事実確認のための調査員(アジャスター)を派遣することがあります。特に事故と加入時期に不自然な点がある場合は、重点的な調査が行われます。
調査では以下のような点が確認されます。
- 事故の発生日時の証拠(防犯カメラ、通報記録、警察への届け出)
- 保険加入時刻と事故との時系列の整合性
- 周囲の目撃情報、ドライブレコーダー映像
調査で虚偽が明らかになれば、契約の解除・保険金の不支払い・返還請求に加え、刑事責任の追及もあり得ます。
刑事告訴される可能性はあるのか
虚偽の申告で保険金を請求しようとした場合、保険会社が刑事告訴する可能性はゼロではありません。実際に詐欺目的が認められれば、詐欺罪(刑法第246条)に該当し、10年以下の懲役に処せられる可能性があります。
特に以下の条件が揃っていると、刑事手続きに発展するリスクが高まります。
- 虚偽申告が明白である
- 保険金を既に一部受け取っている
- 悪質性が高い(過去にも同様の行為がある 等)
ただし、初犯かつ申告が未遂であった場合は、刑事告訴まで至らないケースもあります。
すぐに正直に保険会社へ申し出るべき
虚偽申告に気づいた段階で、すぐに保険会社に事実を正直に申し出ることが重要です。誠意をもって謝罪し、訂正申告することで、刑事手続きに発展することを回避できる可能性があります。
また、弁護士に相談して今後の対応を整理することも推奨されます。誤って申告してしまった経緯を正しく説明できるよう、当時の状況をメモに残しておくとよいでしょう。
実際の事例:虚偽申告による詐欺罪で有罪となったケース
過去には、交通事故を起こした後に後付けで保険契約を結び、保険金を受け取った人物が、詐欺罪で有罪判決を受けた判例もあります。
このようなケースでは、「事故が発生してから保険契約までの経過を隠していた」「被害額を大きく水増しした」などの要素が加わると、悪質性が高く評価されます。
まとめ
事故後にパニックになり保険に加入してしまったとしても、虚偽の申告は保険詐欺に該当する可能性がある重大な行為です。調査員が来る前に、冷静に事実を整理し、正直に保険会社へ申し出ることが、将来的なリスクを減らす第一歩です。
必要であれば法的アドバイスを得ながら、誠意ある対応を心がけることが最善策となるでしょう。