家族が亡くなったあと、口座から公共料金や管理費などが自動で引き落とされていた――。そんな場面に遭遇することは珍しくありません。では、このような引き落としは法的に問題ないのでしょうか?相続の視点から故人の口座管理について詳しく解説します。
相続開始とともに口座は凍結される
人が亡くなると、その瞬間から「相続」が開始され、被相続人(故人)の財産は法的には相続人の共有財産となります。同時に、金融機関が死亡を把握した時点で口座は凍結され、出金や振込などが一切できなくなります。
しかし、金融機関が死亡を把握するまでは、口座は通常通り利用可能で、自動引き落としも通常通り稼働します。
自動引き落としは「違法な引き出し」なのか?
結論から言えば、故人の口座からの自動引き落としは必ずしも「違法」ではありません。ただし、相続の観点からは注意が必要です。
たとえば、管理費や電気料金など故人が生前に契約していたサービスの支払いが死後も継続されていた場合、それはあくまで「生前契約に基づく支払い」であり、引き落とし処理自体は契約に基づいた合法な行為です。
問題となるケースとは?
以下のような場合は、問題となる可能性があります。
- 故人の死亡を把握していながら、あえて口座から引き出した場合
- 他人(相続人など)がキャッシュカード等を用いてATMから出金した場合
- 引き落とし名目が不明瞭で私的支出に該当する可能性がある場合
これらは、後に相続人間のトラブルや、相続財産の使途不明金として争点になることがあります。
どう対処すべきか?正しい手続きと対応
自動引き落としが継続している場合は、以下のように対応しましょう。
- 速やかに銀行へ死亡届を提出し、口座凍結の手続きを行う
- 公共料金や管理費などの契約先に連絡し、支払方法の変更(相続人名義への変更など)を依頼する
- すでに引き落とされた金額については、通帳や引き落とし履歴を記録し、遺産分割協議の材料にする
また、弁護士や税理士に相談しておくと、相続税申告の際にもトラブルを未然に防げます。
実際のトラブル例と注意点
例:父の死亡後、管理費が半年間引き落とされ続けたが、妹がそれを勝手に相続費用から差し引こうとして兄とトラブルに。
→管理費が「誰の負担となるか」は遺産分割協議で決めるべき内容であり、勝手な処理は争いのもとです。
このように、自動引き落としは便利であっても、相続の場面では慎重に扱わなければなりません。
まとめ:自動引き落としは違法ではないが、早めの対応を
故人の口座から自動で引き落とされる支払いは、基本的に生前の契約に基づく正当な処理です。ただし、死亡後の口座管理には慎重な判断が求められ、放置すれば相続人間のトラブルにつながることもあります。早めに銀行・契約先・専門家に相談し、適切な手続きと記録管理を進めていきましょう。