交通事故における慰謝料算定で通院回数が重要視されることは広く知られていますが、暴行や傷害事件においても、通院日数や頻度が慰謝料額に影響を及ぼすのか気になる方は多いでしょう。この記事では、刑事・民事上の慰謝料算定において通院実績がどのように評価されるかを詳しく解説します。
交通事故と暴行事件の慰謝料算定の違い
交通事故では、自賠責保険基準や任意保険基準が整備されており、通院実績(通院期間や日数)が定量的に評価され、慰謝料額の計算にも反映されます。一方で、暴行や傷害事件などの不法行為による損害賠償請求では、保険会社を介さず、民事上の損害賠償として請求されることが多く、柔軟かつ個別具体的な判断が行われます。
つまり、暴行事件でも通院回数や期間は慰謝料額の判断材料となりますが、交通事故のように一定の算定基準に当てはめるわけではなく、全体の事情を考慮して決まる傾向にあります。
通院実績が慰謝料に影響を与える理由
通院回数が多いという事実は、被害者が継続的な治療を必要としたという客観的証拠になります。特に、精神的・身体的苦痛の程度を示す一つの根拠として重要視され、通院日数が多ければ、原則として慰謝料も高額になる傾向にあります。
たとえば、首の打撲や捻挫などで週に2〜3回の通院が3か月続いた場合と、月に1回の通院だけで済んだ場合では、裁判所が認定する慰謝料額には差が出やすいのが実情です。
慰謝料額に影響するその他の要素
通院実績に加えて、加害行為の悪質性、被害の程度、後遺症の有無、精神的ダメージの訴えなども総合的に考慮されます。暴行事件では、加害者の故意性が高く評価されるため、被害者が受けた精神的苦痛が大きいと判断されやすく、これも慰謝料額を押し上げる要因になります。
また、被害届の提出や刑事事件化されているかどうかも判断材料となり、刑事処分と連動して民事上の慰謝料が増額されるケースも見られます。
実際の示談交渉ではどのように扱われるか
民事での慰謝料請求は、加害者側との示談交渉や訴訟で行われます。弁護士が介入することで、通院記録や診断書をもとに慰謝料請求額を論理的に算出し、交渉を有利に進められます。
逆に、証拠が不十分だったり、通院回数が極端に少ないと「本当に苦痛を伴っていたのか?」と疑問視され、慰謝料額が低くなる可能性もあるため注意が必要です。
通院を継続すべきか迷ったときの判断基準
「慰謝料のために通院を続ける」よりも、実際に症状が残っているか、治療の必要があるかを基準に判断しましょう。無理に通院日数を増やすと、かえって不信感を持たれるリスクがあります。
通院の必要性については、主治医とよく相談し、診断書に「治療継続が必要」と明記してもらうことで、正当な通院であることを客観的に証明できます。
まとめ:暴行事件でも通院実績は重要な判断要素
暴行や傷害事件による慰謝料の算定においても、通院回数や期間は精神的苦痛の大きさを示す重要な要素として評価されます。ただし、交通事故のような画一的な基準ではなく、被害の内容や加害者の行為など、複数の要素を総合的に考慮して決定されます。
適正な慰謝料を受け取るためには、弁護士などの専門家に相談し、記録や証拠をしっかり整えておくことが大切です。