日常的に自転車や車を運転していると、見通しの悪い交差点に差し掛かる場面は少なくありません。とくに住宅街や狭い道では、思わぬ危険と隣り合わせです。「この場所は徐行すべき?」「もし自転車が飛び出してきたら?」と不安を感じたことがある方も多いのではないでしょうか。今回は、見通しの悪い交差点における適切な運転行動と、その背景にある法律や交通安全の考え方について解説します。
道路交通法における「徐行」の定義と義務
道路交通法では、「徐行」とは『車両が直ちに停止できる速度で進行すること』と定義されています。具体的な速度の数値はありませんが、概ね時速10km以下とされることが多く、歩行者の動きに即座に対応できる程度のスピードです。
法的に徐行が義務づけられる場所としては、見通しの悪い交差点、歩行者優先の区域、一時停止の標識のある場所などが挙げられます。とくに見通しが悪く、他の車両や自転車、歩行者の飛び出しが予測される場所では、安全確保のために徐行が必須です。
見通しの悪い交差点では「徐行」が基本行動
見通しの悪い交差点では、例え優先道路を走行していたとしても、徐行または一時停止が強く推奨されます。これは、交差点内に進入してくる他車両や歩行者との接触を未然に防ぐためです。
たとえば、交差点の角に建物や植栽がある場合、視界が遮られており、どこから何が出てくるか予測できません。そうした場所での「徐行」は、法令を超えて運転者の責任ある判断として評価されるべき行動です。
自転車の存在を考慮した運転が命を守る
自転車は音も小さく、速度も一定しないため、車のドライバーからは発見が遅れやすい存在です。交差点に進入する際に自転車が横断してくるリスクを考慮し、徐行や一時停止を行うことで、事故を未然に防ぐことができます。
あるドライバーは、住宅街のY字交差点で見通しが悪いにも関わらず徐行せずに進入し、自転車との接触事故を起こしてしまいました。裁判では、「徐行すべき注意義務違反」が指摘され、過失割合に大きな影響を与えました。
法律では義務でなくても、安全配慮としての徐行は評価される
見通しの悪い交差点において徐行義務が明記されていなくても、実際の事故後の責任判断では「予見可能性」と「回避可能性」が重要な判断材料となります。そのため、事故を避ける手段としての徐行は、安全運転義務に基づく適切な行動と評価されることがあります。
逆に、たとえ制限速度内であっても、見通しが悪い場所でそのまま通過し事故を起こした場合は、「安全確認義務違反」とされる可能性もあります。
交通事故を恐れる気持ちへの向き合い方
「交通事故が怖い」と感じることは、運転者として非常に健全な感覚です。恐れを感じることで、注意深くなり、安全運転につながります。しかし過度な不安が行動を妨げるようであれば、交通安全教育の受講や、自転車教室などへの参加も検討しましょう。
また、ドライブレコーダーの設置や交通事故発生情報の確認など、自分の安全管理を補強する手段も活用することで、不安を減らしつつ安全運転が可能になります。
まとめ:徐行は義務だけでなく思いやりと防衛の行動
見通しの悪い交差点での徐行は、法的な義務である場面もあれば、任意判断に委ねられる場面もあります。しかし、交通安全の観点からは、自転車や歩行者の存在を想定し、積極的に徐行することが最善の選択です。
事故のリスクを減らし、思いやりある運転を心がけることで、安心して自転車にも車にも乗ることができます。迷ったときには「もし自分がそこにいたら?」と想像してみることが、安全の第一歩です。