交通事故で後遺障害が残った場合、「どこから補償を受けられるのか」「複数の保険から給付されるのか」について混乱する人は少なくありません。特に自賠責保険と任意保険の関係は誤解されやすく、それぞれの役割を正しく理解することで適正な補償を受けられます。
自賠責保険と任意保険の基本的な役割
自賠責保険(強制保険)は、自動車に必ず加入しなければならない保険であり、人身事故に限定されて補償されます。慰謝料・治療費・後遺障害による損害などが対象で、後遺障害等級に応じて最大4,000万円(重度後遺障害)まで支払われます。
一方で、任意保険は、自賠責でカバーしきれない部分を補う役割を持ち、被害者の損害が大きい場合に差額を支払う形式です。
後遺障害に対して「二重に補償」があるのか?
基本的に補償は二重に受け取れるわけではなく、任意保険の補償は自賠責保険で支払われた金額を差し引いた「上乗せ分」が支払われます。つまり、任意保険会社が全体の損害額から自賠責分を控除した上で支払いを行います。
ただし、自賠責保険と任意保険の支払い元が異なるため、別の口座やタイミングで振り込まれることがあり、それが「2か所からもらったように感じる」原因となっている可能性があります。
後遺障害等級認定の流れ
後遺障害等級の認定は、まず医師の診断書を基に自賠責保険の損害調査機関(損害保険料率算出機構など)が行います。認定されると、等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益が支払われます。
たとえば、12級なら後遺障害慰謝料は224万円、逸失利益も含めた総額で数百万円になることがあります。
自賠責保険と任意保険の関係性における注意点
重要なのは、自賠責保険と任意保険の間に「併給関係」ではなく「控除関係」があるという点です。つまり、重複して補償が得られるのではなく、任意保険は自賠責保険による支払い分を引いた金額だけを支払うことになります。
ただし、任意保険で用意されている「傷害保険」「入通院一時金」など一部の特約では、自賠責とは無関係に支払われる給付も存在します。
過去に「違う会社からもらった記憶」がある理由
自賠責保険の請求を加害者側の保険会社(任意保険会社)が「一括対応」していた場合でも、後遺障害認定後の支払いが別途「自賠責保険の名義」で行われることがあります。このため、被害者のもとに「損保A社と、損保B社の名義で送金があった」ように見えるケースがあるのです。
また、労災保険や医療保険からも給付を受けている場合は、さらに異なる給付が行われていることもあります。
まとめ:後遺障害の補償は「複数経路」だが内容は整理されている
交通事故の後遺障害による補償は、自賠責保険と任意保険という2つの保険から支払われることがありますが、その性質や金額は重複しないよう精算される仕組みになっています。
支払い元が異なるため「2か所から給付された」と感じることはあっても、保険会社側ではきちんと計算されているため、心配する必要はありません。不明な点がある場合は、保険会社または交通事故専門の弁護士や行政書士に相談してみましょう。