車を運転していると避けがたいのが他車との接触事故、とくに「当て逃げ」などの軽微な事故はその場で気づかず、後から発覚することもあります。今回は「2年半前に受けたと思われる当て逃げ」について、今から警察に相談しても捜査が進むのか、現実的な対応はどうすればよいのかを法律的視点から詳しく解説します。
当て逃げの定義と法律上の時効について
当て逃げとは、道路交通法第72条に定める「交通事故の報告義務違反」に該当し、物損であっても違反行為です。加えて、被害者に対する損害賠償責任は民法上の「不法行為」に該当します。
加害者に対して損害賠償請求を行う場合、民法上の時効は原則3年です(2020年の民法改正後)。ただし、加害者が誰か特定できていない場合や、事故の発生日を明確に把握できていない場合は、時効の起算点が曖昧になるケースもあります。
2年半経過後でも警察は捜査してくれるのか
結論から言えば、警察が動くかどうかは「証拠が残っているか」「事件性が高いか」に大きく左右されます。2年半前の出来事であっても、ナンバーやドライブレコーダー映像など加害車両を特定し得る有力な証拠があれば、捜査に応じてくれる可能性があります。
しかし、証拠が一切ない・現場もあいまい・当時警察へ通報していない場合には、捜査対象にならない(または物損扱いで終了)可能性が高くなります。
事故発覚が遅れた場合にとるべき行動
まずは最寄りの警察署や交番へ相談し、事故内容と当時の記憶を整理して説明しましょう。その際、以下のような情報があると捜査に繋がる可能性が上がります。
- 事故日時と場所(可能な限り具体的に)
- 相手車両の特徴やナンバーの一部
- 修理記録(傷の部位や損傷写真)
- その日付近のドライブレコーダー映像
たとえ古い出来事でも、損傷部位の状態や記録があれば、事故として記録される可能性はゼロではありません。
保険請求や時効との関係も注意
自動車保険で車両保険を利用する場合、通常は事故から60日以内に報告することが契約条件です。したがって、2年半後に気づいた当て逃げについて保険請求するのは、原則として不可能です。
一方で、加害者が特定された場合には「対物賠償保険」などから支払いを受けることもあります。被害回復を諦める前に、警察への相談とあわせて保険会社にも事情を説明してみましょう。
過去の事故でも泣き寝入りせず動く意義
たとえ2年以上前の事故であっても、被害を軽視しないことが大切です。加害者が繰り返し事故を起こしている可能性や、他の被害者もいる可能性があります。捜査に進展がなかったとしても、被害を届け出ることで記録として残り、将来的に加害者特定に繋がることもあります。
また、法的な時効に関しても「加害者を知った時から3年」「事故から20年が最終時効」というルールがあるため、今のうちに記録を残しておくことに意味があります。
まとめ:証拠次第で警察対応の可否が決まる
2年半前の当て逃げ事故でも、証拠が明確であれば警察が動いてくれる可能性は残されています。まずは記憶を辿り、記録や証拠をできる限り集めて警察に相談してみることが第一歩です。
同時に、民事上の損害賠償請求や保険対応にも時効があるため、速やかな行動が重要です。泣き寝入りせず、自分の権利を守る行動を取りましょう。