死亡した患者の未収金と相続・債権回収の法的整理|共済金・家賃・医療費への対応策

患者が死亡した後に未払いの医療費や家賃などの債務が残ることは珍しくありません。この記事では、死亡後に発生する共済金の課税、相続放棄の手続き、債権者が債権を回収する方法についてわかりやすく解説します。

死亡共済金は相続税の対象となるのか?

死亡共済金は「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象になります。たとえ掛金を支払っていたのが離婚した元配偶者であっても、受取人が定められていれば、その者に支払われます。

この場合、共済金は法定相続分ではなく契約で指定された受取人に渡りますが、税務上はみなし相続財産として取り扱われるため、一定額を超えると相続税の対象になります。非課税枠(500万円×法定相続人の数)を超えるかどうかがポイントとなります。

相続放棄で債務から逃れられるか?

被相続人(死亡した患者)の子どもなど相続人は、相続を「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかで選択できます。債務がある場合、相続放棄を選ぶことでその債務を引き継ぐことを避けることができます。

注意点としては、相続放棄は原則として被相続人の死亡を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければならないことです。この期間を過ぎると、単純承認したものとみなされ、債務も引き継がれてしまいます。

債権者が未収金を回収する方法

債権者(病院やアパートの大家)は、相続人が存在する場合、その相続人に対して支払いを求めることができます。ただし、相続人が相続放棄した場合は、その者には請求できません。

相続人全員が放棄した場合、最終的には国庫に帰属することになりますが、それまでに順位の低い相続人(兄弟姉妹など)に相続の権利が移ります。債権者はこのような法定相続人を探し出し、請求する必要があります。

また、遺産にあたる財産(預貯金・死亡共済金など)を受け取った事実があると、実質的に相続したとみなされ、債務の返済義務が生じることもあるため、慎重な対応が求められます。

傷病手当金や生活保護による影響

傷病手当金は被保険者本人に支給されるものであり、死亡後は未支給分が遺族に渡るケースがあります。ただし、生活保護を受けていた場合は、国がその金額を回収する(市に吸い上げられる)こともあるため、債権者に回収の余地が少ない可能性もあります。

このようなケースでは、病院としては可能な限り早期に法的なアクションを検討する必要があります。たとえば内容証明郵便による請求、家庭裁判所での調査嘱託の申立てなどが考えられます。

実務上のアドバイスと法的対応

債務の回収にあたっては、被相続人の戸籍をたどって相続人を調査する必要があります。病院などの法人がこれを行うのは難しいこともあるため、弁護士や司法書士に依頼することが現実的です。

また、死亡共済金の受取人が事実上の恩恵を受けたにもかかわらず、相続放棄している場合などは、不当利得や信義則を根拠に訴訟を提起する例もあります。ただし難易度は高いため、法的助言が不可欠です。

まとめ:未収金対応は早期に相続の状況を把握してから

死亡した患者に債務がある場合、その後の債権回収には相続関係の把握がカギとなります。共済金の課税関係、相続放棄の可否、債権回収の具体的方法を正しく理解し、専門家と連携して迅速に動くことが重要です。

未払いの医療費などを少しでも回収するためにも、法的知識と実務的な対応の両面からのアプローチが求められます。

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