交通事故の治療においては、健康保険の使用に関して特有のルールが存在します。特に加害者がケガをした場合、健康保険の取り扱いが「第三者行為」に該当するのかどうかという点は重要です。本記事では、第三者行為に関する正しい知識と、加害者が健康保険を利用する際の留意点について解説します。
第三者行為とは何か?
第三者行為とは、本来健康保険の給付対象者に対する傷病の原因が第三者による行為である場合に該当します。通常は「交通事故の被害者」がこの対象となります。
加害者であっても、自身にケガがある場合は「第三者行為による傷病届」の提出が必要となることがあります。これは、事故の当事者同士で過失割合があり、結果として加害者も補償を受けられる可能性があるからです。
過失割合が第三者行為該当性に与える影響
加害者に100%の過失(例:過失割合10-0)である場合、加害者自身のケガについては原則として健康保険の使用は認められます。ただし、その場合でも自費ではなく健康保険を使いたい場合には「第三者行為届」を提出するよう求められるケースがあります。
一方、過失割合に応じて相手側にも過失がある場合(例:70-30など)、加害者のケガについても第三者の行為による傷病とされ、第三者行為届の提出が必要となるケースが多く見られます。
健康保険を使う際の実務フロー
まず、健康保険を利用する際には、加入している健康保険組合(協会けんぽや共済組合など)に「第三者行為による届出書」を提出する必要があります。
医療機関では保険証の確認だけではなく、交通事故によるものか否かを確認されることがあります。この際、第三者行為である旨を隠したまま健康保険を使用すると「不正使用」とみなされる可能性もあるため注意が必要です。
加害者側が任意保険で対応する際の処理方法
加害者が健康保険を利用し、治療費を一時的に自己負担した場合、その領収書を任意保険会社に提出することで後日精算を受けることができます。ただし、その精算手続きが「任意保険の補償内容」と一致している必要があります。
また、任意保険が「人身傷害補償保険」などを含んでいる場合は、過失割合にかかわらず、自己の治療費をカバーできる制度があり、健康保険を使わずにダイレクトに補償を受けられるケースもあります。
医療機関の自賠責担当として注意すべきこと
医療機関で自賠責対応を行う際、患者が加害者である場合でも「事故の概要」「過失割合」「保険の種別(自賠責、任意、人身傷害)」を詳細にヒアリングし、健康保険適用の可否と必要書類を案内することが重要です。
また、第三者行為届が必要かどうかは、最終的には健康保険組合の判断となるため、あらかじめ加入先に確認を取るよう患者に促しましょう。
まとめ
交通事故の加害者が健康保険を利用する際には、過失割合や事故の状況によって「第三者行為」に該当するかが異なります。
正確な判断と適切な書類の提出により、保険のトラブルを回避し、円滑な診療と補償の手続きが可能となります。自賠責担当としての対応力を高めるためにも、保険制度の基本知識を押さえておきましょう。