借金の時効と中断の実務:訴訟前に知っておきたい債権者の対策

個人間でお金を貸し借りした場合、債権者が気をつけたいのが「消滅時効」です。とくに返済の期日を定めていない借用書の場合、いつから時効が進行するのか、どのような行為で時効が中断するのかを理解しておくことは重要です。

個人間の貸し借りと時効期間

民法では、金銭消費貸借契約に基づく債権の消滅時効は原則として「5年」です(民法166条)。ただし、令和2年4月の法改正により、貸主が「債権者」であるときは原則5年とされています。

貸付日が令和3年8月であれば、特段の中断がない限り令和8年8月には時効を迎える可能性があります。

返済期限がない借用書の場合の起算点

返済期日の記載がない借用書では、債務者に「返済請求」をしてから相当期間(通常は請求から1〜2週間後)で債務が履行期に入ると解釈されます。つまり、初めて請求した日が起算点となることが多いです。

しかし、定期的な請求を行っていた場合でも、時効の進行は止まりません。これを中断するには、一定の法的措置や債務者の承認が必要です。

内容証明や部分返済で時効は中断するか

内容証明郵便による督促だけでは時効中断にはなりません。ただし、債務者が内容証明のあとに一部でも返済(例:1万円を振り込む)した場合、それは「債務の承認」に該当し、時効はその時点からリセットされます(民法152条)。

このため、令和3年8月に貸したとしても、たとえば令和5年に1万円の返済があれば、そこからさらに5年間、つまり令和10年まで請求可能な状態になります。

時効完成を避けるためにすべき行動

時効完成を避けるためには、訴訟提起や支払督促などの「時効中断手続き」が有効です。これにより、裁判の係属期間中は時効の進行がストップします。

また、簡易裁判所での支払督促制度を利用するのも比較的簡易な方法です。相手方の住所が判明していることが前提となりますが、書類だけで進められるのがメリットです。

実際の事例:一部返済で助かったケース

過去の事例では、内容証明を送ったあとに1万円の振込があり、それを証拠として時効をリセットできた債権者もいます。入金された日を証拠に訴訟を起こし、最終的に全額回収に至ったケースもあります。

こうした場合、メールのやり取りや振込明細書などを証拠として保管しておくことが重要です。

まとめ:時効には厳密な対応が不可欠

借金の時効問題は、債権者にとって非常にシビアな問題です。しかし、内容証明や一部返済といった事実があれば、時効をリセットできる可能性があります。

少しでも不安がある場合は、速やかに弁護士へ相談し、訴訟や支払督促の手続きを検討しましょう。重要なのは、時効を「止める」ための行動を起こすことです。

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