親が亡くなり相続放棄をすることになった場合でも、生活の中で発生していた契約や支払い義務はさまざまな形で残ることがあります。特に賃貸物件や携帯電話、インターネット回線といった契約関係は、誰が契約者か、支払っていたのは誰か、名義は誰かによって法的な影響が大きく異なります。この記事では、相続放棄とそれに付随する義務・責任について、具体的なケースを交えて詳しく解説します。
相続放棄後に家庭裁判所の現地調査はあるのか?
相続放棄の手続きは、通常、家庭裁判所に申述書を提出することで完了しますが、特別な事情がない限り、家庭に訪問するような現地調査は行われません。ただし、書類に不備がある場合や、事実確認が必要と判断された場合には、追加の資料提出や事情説明を求められることがあります。
申述書の提出から受理までは、早ければ1〜2週間、遅いと1ヶ月程度かかることが一般的です。受理通知が届くまでは法的に完全な効力が発生していないため、その期間は注意が必要です。
賃貸の契約者が家族でも相続放棄した人の責任は?
被相続人(今回は母)が実際に住んでいた賃貸物件であっても、賃貸契約者が別の家族(例えば姉)である場合、退去や解約の手続きはその契約者が行うことになります。管理会社や大家がその事情を承知していれば、契約者本人が責任をもって原状回復や鍵の返却を済ませれば問題ありません。
相続放棄をした人が賃貸物件の契約当事者でない場合、その物件に関する法的責任を負うことは基本的にありません。ただし、契約者が高齢や病気などで退去手続きが困難な場合には、家族間で協力することが実務的に求められることもあります。
家賃の未払いは誰の義務?振込名義と契約者の違い
家賃の支払いが母の口座から行われていたとしても、賃貸契約者が姉であるならば、法的には契約者が債務者となり、未払い分の家賃についても原則として姉が支払う責任を負います。これは賃貸借契約が姉と貸主の間で結ばれているためです。
ただし、契約書に「支払者=母」などと明記されていたり、貸主が特別に母に対して請求していた場合など、個別の状況によって異なる判断がなされる可能性があります。心配であれば、契約書や過去の家賃支払い状況を整理し、専門家に相談すると安心です。
スマホやWiFiなど通信機器の残債はどうなる?
携帯電話本体やWiFi機器などの分割払い契約は、通常、名義人である被相続人の債務にあたります。相続放棄をした場合、その残債についても法的には支払義務を負わないことになります。相続人全員が放棄すれば、通信会社は回収を断念することも多いですが、念のため解約手続きや放棄の旨を通知しておくと良いでしょう。
ただし、放棄前に支払いをしたり、端末を引き続き使い続けていると、債務を承認したとみなされるおそれがありますので、相続放棄を決めた時点で使用を停止し、速やかに返却または処分することが望ましいです。
親族全員が相続放棄した場合の財産や債務の行方
被相続人のすべての相続人が相続放棄をすると、「相続人不存在」となります。この場合、遺産は原則として国庫に帰属します。債権者(携帯会社、家主など)は、誰にも請求できなくなることがあるため、一定期間後に回収を断念する場合もあります。
ただし、死亡直前に家族が被相続人の金銭を引き出して使用していた場合など、特定の条件下では「相続人ではないが管理責任がある」とみなされ、請求を受けるケースもゼロではありません。慎重に行動することが大切です。
まとめ:相続放棄しても契約関係には注意が必要
相続放棄をすることで多くの債務を免れることができますが、すべての義務が自動的に消滅するわけではありません。契約の名義や実際の使用状況によっては、放棄者や家族が法的または実務的な責任を負う可能性もあります。
トラブルを避けるためには、各契約の名義を確認し、放棄のタイミングで使用停止・解約を行い、必要があれば弁護士や司法書士に相談することが重要です。