行政法において、複数の行政行為が連続して行われる場合、それぞれの行為がどのように評価されるかは重要な論点の一つです。行政行為の違法性の判断基準については、行政事件訴訟の実務でもよく争点になります。
原則:行政行為は個別独立に評価される
基本的な考え方として、行政行為はそれぞれ独立して法的効果を持つとされており、その違法性も個別に判断されるのが原則です。これを「行政行為の独立性原則」と呼びます。
したがって、先行する行政行為が違法であったとしても、それが当然に後行の行政行為に影響を及ぼすわけではありません。後行行為の適法性は、原則として、その行為自体の要件充足により判断されます。
例外:先行行為の違法が後行行為に影響する場合
ただし、例外も存在します。たとえば、後行行為が先行行為を前提とする処分であり、その先行行為の効力が消滅していたり、取り消されたりしていた場合には、後行行為の適法性にも影響を及ぼすことがあります。
具体例としては、建築確認の取り消し後に出された使用制限命令や、許可が前提となる行政指導が挙げられます。このようなケースでは、連動性が認められ、後行行為の違法性も検討される必要があります。
実務上の判断枠組み
実務においては、行政行為の独立性が維持されるかどうかは、個々のケースの法的構造や趣旨に基づいて判断されます。判例もこの点で細やかに判断を分けています。
例えば、「課税処分」と「滞納処分」など、先行行為の効力が前提となる後行行為では、先行行為が無効または取り消された場合、後行行為も無効となる可能性があります。
判例に見る判断の傾向
最高裁判所は、一般に行政行為の独立性を認める立場に立っており、先行行為の違法性が後行行為の効力に当然に影響を与えるとはしていません。ただし、その影響が制度的に不可避であると認められる場合には、違法性が及ぶとしています。
たとえば、住民基本台帳に基づく住民票の削除が違法であると認定された場合、それに基づく選挙人名簿の削除も違法になる可能性があるとした判例があります。
まとめ
行政行為が連続して行われる場合、原則として各行為は独立して違法性が判断されます。ただし、先行行為と後行行為が制度的に密接に関連している場合や、後行行為の根拠として先行行為が不可欠なときには、その違法性が連動して評価されることがあります。
このような判断枠組みを理解しておくことは、行政法の基本的理解にとって重要であり、実務や試験においても頻出の論点となっています。