夫婦関係が冷え込み、別居という選択肢を取ることは決して珍しいことではありません。しかし、婚姻関係が継続している状態での別居では、生活費や収入管理に関するルールが不透明になりがちです。この記事では、特に「配偶者が金銭を管理している場合に、自分の口座や給与をどう扱えるか」について詳しく解説します。
婚姻中の別居と法的な位置づけ
別居していても、離婚が成立するまでは法的には「婚姻中」と見なされます。そのため、法律上の義務や権利、たとえば夫婦間の扶養義務や財産分与の対象などは変わりません。
ただし、実生活では財布を別にする夫婦も多く、別居後にお互いの生活を独立して運営することは可能です。配偶者に金銭管理を委ねていた場合でも、それを解除して自分で管理することに法的な制限はありません。
給与口座の管理権限は誰にあるのか
労働によって得た給与は原則としてその労働者個人の財産です。したがって、別居をきっかけに給与口座の通帳やキャッシュカードを取り戻し、自分で管理することはまったく問題ありません。
配偶者に任せていた場合も、本人が明確な意思をもって管理を変更したい旨を伝えることで、通帳再発行や暗証番号変更が可能です。銀行窓口で本人確認書類を提示すれば手続きが進められます。
生活費の分担と婚姻費用分担義務
民法760条には「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生じる費用を分担しなければならない」とあります。これは「婚姻費用分担義務」と呼ばれ、別居していても有効です。
特に、妻が子どもを引き取り養育している場合、夫側は妻子の生活費を支払う必要があります。この点を踏まえ、自分の収入から一定額を妻に送金する形で対応するのが一般的です。
実例:別居後に通帳を取り戻したAさんのケース
Aさん(40代・会社員)は、長年妻に通帳とカードを預けていましたが、別居をきっかけに自分で給与を管理したいと考えました。銀行に事情を説明し、再発行手続きをして自分の名義の通帳とカードを再取得。以後、生活費は家庭裁判所で決めた婚姻費用に従って、毎月振り込んでいます。
このように、別居後も法的ルールと合意があれば、収入を自分で管理しつつ生活費の支払いも適正に行うことが可能です。
妻が金銭管理を拒否する場合の対応策
万が一、配偶者が通帳やカードを返さない・勝手に出金してしまうといった事態に直面した場合、家庭裁判所の「保全処分」や「婚姻費用分担請求調停」などの法的手段を検討できます。
また、配偶者の行動が不当利得や財産権侵害とみなされる場合には、民事訴訟で損害賠償請求が認められる可能性もあります。トラブルを避けるためにも、できる限り話し合いでの解決を目指しましょう。
まとめ:別居後も自分の財産は自分で守る意識を
婚姻中の別居では、お互いに扶養義務を果たす必要はありますが、それと同時に自分自身の財産管理も正しく行う権利があります。給与や口座の管理は、本人の意思に基づいて変更可能です。生活費の支払いについても明確に取り決めを行い、公平な運用を目指しましょう。
複雑な問題が絡む場合には、家庭問題に詳しい弁護士への相談も検討してみてください。