市場における競争を健全に保つために設けられている「独占禁止法」。一方で、企業が特許を取得し製品を独占的に生産・販売することも、一定のルールのもとで合法とされています。本記事では、独占禁止法と特許の関係、市場占有率が50%を超える場合の法的な扱いについて解説します。
市場占有率50%超えは必ずしも違法ではない
「独占禁止法」は、事業者が市場において不公正な取引や競争制限行為を行うことを防ぐ法律です。しかし、市場占有率が単に50%を超えたからといって、それだけで違法とは判断されません。
重要なのは、その支配力を使って他の企業を排除したり、価格を不当に吊り上げたりするなど、市場の健全な競争を妨げる行為を行っているかどうかです。公正取引委員会も、占有率が高いだけでは違法とは断定していません。
独占的な地位と違法行為の違い
独占的な地位にある企業が存在すること自体は、法律に違反していないケースもあります。例えば地域で唯一の電力会社やガス会社などは独占的ですが、法律上認められた範囲で活動している限り問題ありません。
違法となるのは、以下のような行為が見られる場合です。
- 競合企業への供給停止・圧力
- 不当廉売による競合排除
- 取引先への一方的な条件変更
特許と独占禁止法の「特例的関係」
特許は、発明を一定期間独占的に利用できる権利です。つまり、特許による独占は、知的財産の保護という目的のために法律で認められた例外的な独占です。
このため、特許製品によって市場占有率が50%を超える状況が生まれた場合でも、それだけで独占禁止法に違反しているとはなりません。ただし、その特許を使って競合を不当に排除したり、ライセンスを拒否したりすることで不公正な競争を促す場合は、独占禁止法の規制対象となる可能性があります。
実例:マイクロソフト事件と知的財産の濫用
過去の代表的な事例に、米国での「マイクロソフト事件」があります。マイクロソフトはWindows OSの市場支配力を使って、競合ブラウザを排除するような行為を行ったとして、独占禁止法(反トラスト法)違反で提訴されました。
このケースでは、「特許や製品の優位性を利用して市場を独占し、その影響を不当に広げる行為」が問題視されました。つまり、特許だからといってすべての独占が無条件に許されるわけではないのです。
法律は「矛盾」ではなく「調整」をしている
独占禁止法と特許法の関係は、矛盾というよりも「調整関係」にあります。特許による保護を一定期間認めることで技術革新を促進しつつも、それが行き過ぎた場合には市場の健全性を守るため独占禁止法で調整を図る仕組みです。
つまり、特許を持っていても市場のルールを逸脱すれば違法となるというバランスの上に成り立っているのです。
まとめ:特許による独占は例外的に認められるが、万能ではない
市場占有率が50%を超えたとしても、必ずしも独占禁止法違反ではありません。さらに、特許による製品の独占は原則的に認められていますが、それを濫用することで法的責任が問われることもあります。
法律は矛盾しているのではなく、目的に応じた使い分けとバランスの調整を行っています。市場での支配力をどう使うか、そこにこそ法の目が向けられているのです。