覚醒剤取締法違反に関する再犯事例では、量刑や執行猶予の有無が非常に厳しく判断される傾向があります。特に過去に複数回の懲役歴がある場合、裁判所の判断はより重くなりがちです。本記事では、再犯時の執行猶予の可能性や判断基準について、実際の運用に基づいて解説します。
覚醒剤の再犯と量刑の基本的な考え方
覚醒剤取締法では、単純所持・自己使用であっても再犯の場合は原則として厳罰が科されます。特に3回目以降の再犯となると、社会的にも再犯リスクが高いと判断され、懲役刑の実刑率が非常に高くなります。
実務上、再犯の累計回数、前科からの経過期間、更生の兆し、家庭や職場の支援状況などが総合的に考慮されますが、4回目の逮捕歴となれば、執行猶予が付く可能性は極めて低くなるといわれています。
執行猶予が認められにくい典型的な条件
以下のような条件が揃うと、執行猶予はほぼ認められない傾向にあります。
- 前科に同種の覚醒剤事犯が複数ある
- 過去の執行猶予期間中に再犯した経験がある
- 出所から数年以内の再犯(ただし本件では13年6ヶ月経過)
- 治療・更生の努力が見られない、または継続していない
ただし、今回のように出所から10年以上が経過しており、それまで無犯罪であった場合、裁判所の判断も若干柔軟になる可能性があります。
執行猶予が認められたケースとその条件
実例では、次のような条件が揃った場合に執行猶予が付いた判例も存在します。
- 長期間の再犯歴がなかった(10年以上など)
- 医療機関での治療やカウンセリングを受けていた
- 家族や職場の支援が強く、社会復帰に向けた体制が整っていた
- 所持量がごく微量であり、営利目的ではなかった
こうした場合は「情状酌量」の余地として裁判官の判断に影響を与える可能性があります。
裁判所の量刑判断に影響する要素
執行猶予の可否は刑法第25条に基づいて裁判所が判断します。具体的には以下のような要素が量刑に影響を与えます。
- 犯行の悪質性(量・使用目的)
- 再犯の経緯と動機
- 社会復帰への意欲と準備(就労状況、家族の支援)
- 医師による治療継続の証明書
- 自白の有無と反省の態度
覚醒剤依存症は治療が必要な病とされ、最近では司法の現場でも医療機関との連携による社会復帰支援が進められています。
再起を目指すために必要な行動
万が一逮捕・起訴となっても、医療的ケアや社会的支援を受けていることを示すことで、刑の軽減が期待できることもあります。弁護士と連携し、治療意欲を具体的に示す資料(診断書、通院記録)を準備することが重要です。
また、保護観察や更生施設との関わりを持つことで、裁判官に対して「再発防止策が整っている」という信頼を与えることができる可能性もあります。
まとめ:状況を受け止め、正しい対応を
再犯であっても、すべての人に再起の道が閉ざされているわけではありません。ただし、過去の懲役歴や犯罪の内容によっては、執行猶予が認められる可能性は極めて低いのが現実です。まずは経験豊富な弁護士に相談し、法的な選択肢と更生の支援体制を整えることが、今できる最善の一歩です。