医療業界において、訴訟リスクが特に高いとされるのが産婦人科です。本記事では、産婦人科医が実際にどの程度の確率で訴訟リスクにさらされているのか、信頼できるデータや実例をもとに解説します。
産婦人科が訴訟リスクの高い科とされる理由
出産という生命の誕生に関わる産婦人科は、患者や家族の期待が非常に高く、一方で予測不能な緊急事態も起こりやすい分野です。母体・胎児のどちらかに不測の事態が起これば、感情的なトラブルや責任問題につながりやすくなります。
また、医療過誤とされやすい事象(例:脳性まひ、帝王切開の判断遅れ、新生児死亡など)が一般の人にも直感的に理解されやすい点も、訴訟の多さに影響しています。
実際の訴訟件数や確率:日本の状況
厚生労働省や日本医療機能評価機構の統計によると、日本全体の医療訴訟件数は年間で約800~1000件前後。そのうち産婦人科関連は常に上位で、全体の約10%前後を占める傾向にあります。
医師1人あたりの訴訟リスクとしては、平均的な診療科では30年のキャリアで約5%程度とされていますが、産婦人科の場合は約20%前後という推定もあります。つまり、5人に1人がキャリア中に訴訟を経験する可能性があるという計算です。
海外と比較したリスク水準
アメリカでは医療訴訟が非常に多く、米国医療経済研究所の調査では産婦人科医の75%以上がキャリア中に1度は訴訟を経験するとされています。
日本と比べても遥かに高い数字ですが、日本でも医療訴訟の増加傾向は続いており、特に情報公開や患者権利意識の高まりにより訴訟のリスクは相対的に高まっています。
訴訟件数の傾向と予防策
訴訟件数が集中するケースとしては、以下のような事例が多く見られます。
- 分娩中の緊急帝王切開の判断遅れ
- 胎児異常の見落とし
- 患者・家族との意思疎通不足
そのため、インフォームドコンセントの充実や、診療記録の正確な記載、多職種との連携による判断の可視化が重要な対策となります。
実際に訴訟された医師の体験談
ある産婦人科医は、緊急分娩時に母体は救えたものの、胎児に障害が残ったことで訴訟に至りました。しかし、日々の記録が詳細だったことや、カンファレンスでの判断過程を残していたことが証拠となり、医師側の責任は問われませんでした。
このように、記録と説明を丁寧に行うことがリスク軽減に大きく関わってきます。
まとめ:産婦人科医の訴訟リスクを知ることの意義
産婦人科は医療訴訟リスクが高い分野であることは事実であり、訴訟経験率はおよそ20%という高水準にあります。
しかし、それは医療過誤の多さを意味するものではなく、患者の期待とのギャップや感情面の強さが背景にあります。適切な説明、記録、連携を徹底することで、リスクを大きく減らすことが可能です。
訴訟リスクの現実を知った上で、信頼される医療提供者を目指すことが、今後の医療現場において重要です。