遺贈寄付の金額は遺産分割協議で減額できる?遺言書との関係と変更の可否を解説

相続が発生した際に遺言書に遺贈寄付の記載がある場合、その金額が大きいと相続人の間で調整が必要になることもあります。本記事では、遺言書に記載された遺贈寄付金額を遺産分割協議で減額・変更できるかについて、実務と法律の両面から詳しく解説します。

遺贈とは何か?法的な基本を確認しよう

遺贈とは、故人(被相続人)が遺言書に基づいて、相続人以外の第三者や団体へ財産を無償で譲る行為です。寄付を伴う遺贈は「寄附遺贈」とも呼ばれ、主に社会貢献を目的として財団やNPO法人、大学などへ指定されることが多いです。

法的には、遺贈は遺言者の最終意思に基づくため、原則としてその内容は尊重されるべきとされています。

相続人の同意があれば遺産分割協議で変更できるか

遺贈に関しては、包括遺贈特定遺贈に分かれます。特定遺贈(例:「3000万円を◯◯団体に寄付」)の場合は、その財産が受遺者に直接渡る形となるため、受遺者の同意がなければ内容の変更や放棄はできません

今回のように遺贈先が明記されていないケースでは、「団体を探して遺贈してほしい」という趣旨の指示に近いため、厳密には受遺者が未確定の特定遺贈に分類される可能性があります。

実際に金額変更するにはどうすればいい?

もし遺言執行者が指定されていない場合、相続人全員が合意し、かつ受遺者が特定されていない(=同意を得る相手がいない)場合には、実務上は遺贈寄付額の調整が協議により行われるケースもあります。

たとえば、遺贈先の団体を最終的に相続人が選定する場合、「選定後に通知すればよい」とされ、金額を減額して選定・実行することが実質的に可能になることもあります。

注意点:受遺者の同意が必要となるケース

逆に、既に明確な団体名が記載されていたり、遺言書が公正証書遺言で強い法的効力を持っている場合は、その団体の同意なくして変更・撤回はできません。このようなケースでは、裁判所の許可や家庭裁判所での手続きが必要となることもあります。

遺言執行者がいれば、その人の責務として執行内容の調整を行うこともありますが、本件では指定されていないため、相続人間での合意と慎重な判断が求められます。

実例:寄付金額が高額すぎたケースの対処法

ある家族では、故人の遺言に「環境保護団体に5000万円」と記載がありました。しかし相続財産の合計が6000万円であり、相続人の生活が困窮する恐れがあるため、寄付先をNPO法人に限定し、実際には1500万円の寄付に調整。その際、家庭裁判所に事情を報告し、相続人全員の同意書を添付して対応しました。

このように、裁量の余地がある表現や未確定な遺贈内容であれば、柔軟な対応が可能な場合もあります。

まとめ:遺贈寄付の金額は状況によって見直し可能な場合もある

遺言書に記載された遺贈寄付額は原則尊重されるものですが、受遺者が未確定で、遺言執行者がいない場合には、相続人全員の合意により内容の調整が可能となる余地があります

実務においては、家庭裁判所や専門家への相談を通じて、故人の意思を尊重しつつ現実的な分配案を検討することが重要です。高額な遺贈寄付がある場合は、法律の専門家に早めに相談することをおすすめします。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール