就職活動の過程で得た情報を「note」やブログで共有する人が増えていますが、企業のエントリーシート(ES)の設問内容をネットに公開しても法律上問題はないのでしょうか。本記事では、実際に公開する際に気をつけるべき著作権や契約上の義務について詳しく解説します。
ES設問は著作物か?著作権との関係を整理
企業のES設問文は、創作性が認められる場合、著作権法上の「著作物」に該当する可能性があります。特に独創的な表現や問いかけ、構成がある場合、企業がその著作権を有することになります。
そのため、設問内容をそのまま転載する場合には、著作権侵害となるリスクがある点に注意が必要です。
引用であればOK?正しい「引用」のルールとは
著作権法では、正当な「引用」であれば著作物の転載が認められています。引用として認められるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 引用部分が主ではなく、本文が主であること
- 引用部分を明確に区別していること(カギ括弧や色分けなど)
- 出典が明記されていること(例:「○○社2025年度ESより」)
ES設問を参考に分析や自分の体験談を付加して紹介する形式であれば、引用の範囲内で公開することが可能です。
守秘義務や利用規約に違反していないか確認
企業によっては、ES提出前に「外部への公開禁止」や「内容の取扱いに関する同意書」などを交わしている場合があります。これに違反した場合、民事上の責任(損害賠償)を問われる可能性もあります。
また、リクナビやマイナビなどのナビサイト経由で入手した設問であれば、利用規約に外部転載を禁止する条項があることもあるため注意しましょう。
実例:noteやSNSでの公開とその影響
たとえば、ある学生がnoteに「人気企業100社のES設問集」をそのまま転載し、企業から削除要請を受けたケースがあります。企業側はブランドイメージや公平性の観点から、事前に許可なく設問を公開されることに強く反発する傾向があります。
一方で、設問内容を要約し、自分の回答例や工夫とともに紹介した記事は、他の就活生にも好評で企業側からの指摘もなかったという報告もあります。
安全に情報を発信するための工夫
情報を公開したい場合は、以下のような工夫が安全です。
- 設問を「内容の要旨」や「概要」としてまとめる
- 企業名を特定せずに「某金融系企業」などにぼかす
- 明確に引用を示し、出典や使用目的を記載する
また、事前に企業に問い合わせるか、OB・OGに相談しておくと安心です。
まとめ:ES設問の公開には注意が必要。合法に情報発信するには?
ESの設問内容をネットで公開することは、一概に違法とは言えませんが、著作権や守秘義務に配慮した運用が求められます。
引用のルールを守り、企業名を特定せず、自己の経験と組み合わせた形での紹介が望ましい方法です。「自分が苦労して得た情報を誰かの役に立てたい」という思いを大切にしながらも、法的なリスクには慎重に対応しましょう。