企業において従業員から交通事故の報告を受けた際、その内容に疑問が生じるケースは稀ではありません。特に報告内容と実際の状況に食い違いがある場合、どのように対処すべきか判断に迷うことも。本記事では、従業員の虚偽報告が疑われる事故への対応手順と、法的な注意点について解説します。
まず確認すべきは「事実関係」の把握
報告と目撃情報が一致しない場合、最も重要なのは客観的証拠の収集です。例えば以下のような方法が考えられます。
- 事故現場の写真や映像（ドラレコ・監視カメラなど）
- 他の目撃者の証言
- 修理業者の見積もり書や損傷状況の確認
これらの情報があれば、従業員の申告内容との整合性をチェックしやすくなります。
本人の同意なしに警察に確認してもよいか？
原則として、事故当事者でない第三者が警察に事故の詳細を照会するには、情報提供を受けるための正当な理由が求められます。
ただし、企業の管理監督責任の一環として、安全配慮義務や事故の再発防止策として調査が必要である場合、一定の合理性があるとみなされることもあります。とはいえ、警察が企業に詳細な事故情報を開示する義務はないため、基本的には本人の同意を取るか、弁護士を通して照会するのが望ましいです。
従業員の虚偽報告が疑われるときの対応手順
虚偽報告を放置すると、企業の信頼性や保険対応にも影響が及びます。次のようなステップで対応することが適切です。
- 所属長を通して再度事実確認を行う
- 関係者（目撃者）からの聞き取り調査を実施
- 社内報告書として記録に残す
- 就業規則に基づいた懲戒処分の検討（悪質な場合）
これらは、今後同様の事例を防止するための社内体制の整備にもつながります。
ドライブレコーダーが消えている場合の対応
ドライブレコーダーの映像が消えていたとしても、以下の代替手段で証拠が得られる場合があります。
- 事故相手からの証言
- 保険会社に提出された事故報告書
- 事故の実況見分調書（本人の同意があれば警察から取得可）
また、定期的にドラレコの映像をバックアップする社内マニュアルの整備も今後の課題となります。
法律上のリスクと対処法
従業員が虚偽の報告をした場合、信義則違反や業務命令違反に該当する可能性があります。場合によっては懲戒解雇も視野に入れることができますが、慎重な手続きが求められます。
また、企業側が誤った対応をした場合、プライバシーの侵害や不当な調査とみなされるリスクもあるため、弁護士など専門家に事前相談するのが望ましいです。
まとめ：慎重かつ客観的に対処を
従業員の事故報告に疑念を持った場合、焦って対応するのではなく、冷静に事実関係を確認することが大切です。
本人の言い分を尊重しつつも、必要であれば弁護士を通じて警察や保険会社に確認するなど、透明性と法的正当性を意識した対応が企業リスクを軽減します。