運送業を営む上で、法令に基づいた記録の保存は事業者としての責任です。特に事故記録や運行指示書といった重要書類の保存期間については、道路運送法や関連通達により明確に定められています。この記事では、これらの書類を適切に保管するための期間や注意点をわかりやすく解説します。
事故記録の保存期間は3年間が原則
事業用自動車の事故については、道路運送法施行規則第60条に基づき、「事故報告書」や関連する記録の保存期間は3年間とされています。これは重大事故・軽微な事故にかかわらず、すべての事故が対象です。
例えば、運転中の物損事故、接触事故、車両火災などが発生した場合は、詳細な報告書を作成し、保管する義務があります。保存方法は紙媒体・電子データどちらでも可能ですが、第三者機関の監査等で提示できる状態にしておく必要があります。
運行指示書の保存も3年間
運行管理者が作成する「運行指示書」や「点呼記録簿」についても、国土交通省告示(運行管理規則)により3年間の保存義務があります。運転者ごとの出庫・帰庫の記録、健康状態の確認、アルコールチェック結果なども対象です。
運行指示書は日々の運行記録として非常に重要であり、事後の証拠や安全対策の資料として活用されます。事業用車両1台ごとに管理を徹底しましょう。
保存期間を守らなかった場合のリスク
保存義務違反は行政処分の対象となる可能性があります。例えば、監査時に3年分の事故記録や指示書が不備だった場合、「文書警告」や「事業改善命令」が発せられるケースもあります。
悪質な場合には事業停止命令などの重い処分につながることもあるため、保存期限の管理は業務の基本事項として認識しましょう。
保存方法の工夫とデジタル化のすすめ
記録を保管する際には、「運転者別」「車両別」「日付順」など整理ルールを決めておくと後から探しやすくなります。また、保管スペースの問題やバックアップの観点から、電子化による保存も積極的に取り入れるべきです。
国土交通省では「IT点呼」や「デジタコ導入」により、運行管理の効率化を推進しており、国交省公式サイトでもガイドラインを確認できます。
保存対象となる書類の一覧
書類名 | 保存期間 |
---|---|
事故記録・報告書 | 3年間 |
運行指示書 | 3年間 |
点呼記録簿 | 3年間 |
整備記録簿 | 1年間(次の記録があるまで) |
日報・運行記録計(デジタコ) | 原則1年間 |
まとめ:記録の保存は安全管理と法令遵守の基本
運送業では、法令で定められた保存期間に従って記録を管理することが求められます。事故記録や運行指示書は3年間の保存が必要であり、適切に保管することが業務の信頼性と安全性の向上につながります。
保存義務を意識し、業務の見直しやデジタル管理の導入などを進めることで、法令違反のリスクを避けつつ、効率的な運行管理体制を築くことができます。