家庭事情により氏の変更を希望する場合の手続きと同意書不要の対応策とは

結婚や人生の節目を迎えると、過去の家族関係や戸籍上の名前について考え直す機会が訪れます。この記事では、養親との縁が切れたあとでも氏(姓)を変更したいと考える方に向けて、家庭裁判所での手続きや同意書の問題をどのように乗り越えるかを解説します。

氏の変更は家庭裁判所への申し立てが必要

一度養子縁組によって氏を変更した場合、その後元の氏に戻すには、家庭裁判所へ「氏の変更許可申立て」を行う必要があります。これは戸籍法第107条第1項に基づく法的手続きです。

単に「元の姓に戻したい」という気持ちだけで許可されるものではなく、「やむを得ない事由」が必要とされます。今回のように、親との断絶や虐待、養親との関係が既に消滅していることなどは、その「やむを得ない事由」として認められる可能性が高いです。

同意書は必ずしも必要ではない

戸籍内に15歳以上の者の同意書が求められるとされていますが、これは「変更対象者が未成年である場合」などに主に該当します。成人が氏の変更を申し立てる場合には、必ずしも同意書が求められるわけではありません。

家庭裁判所は事情を考慮して審理するため、虐待などの理由で親との関係が絶たれている場合、「同意が得られない事情」を書面で説明することで、同意書がなくても手続きが進められる可能性があります。

必要書類と手続きの流れ

  • 申立書(氏の変更許可申立書)
  • 申立人の戸籍謄本(全部事項証明)
  • 氏の変更理由書(詳しい事情を書く)
  • 収入印紙800円、郵便切手

書類を整えて、本籍地または住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。審理は書面審査のみの場合もあれば、本人出頭を求められることもあります。

「やむを得ない事由」として認められる実例

過去の裁判例や実務運用では、以下のような理由で氏の変更が認められています。

  • 親との絶縁・連絡不能・生死不明
  • 養親との交流が完全に途絶えた
  • 社会生活上著しい不便(職場・結婚相手に氏の由来を聞かれる等)

本件のように、虐待の被害や10年以上音信不通で、婚約を機に身辺整理を希望することは、十分にやむを得ない理由に該当し得ます。

家庭裁判所申立後の対応と注意点

審理後、裁判所から「氏の変更許可審判書」が届いたら、これを持って市区町村役場で戸籍の訂正を行います。役所での変更は期限(おおむね10日以内)がありますので注意してください。

また、姓の変更に伴って、運転免許証、健康保険証、銀行口座、マイナンバーカードなどの名義変更手続きも忘れずに行いましょう。

まとめ:あなたの意思が尊重される手続きは可能

たとえ過去に親との関係が断絶していたとしても、氏の変更を正当な理由として申し立てることは可能です。家庭裁判所では事情を丁寧に考慮してくれるため、諦めずに申請する価値があります。

「同意書が取れないから」と悩むよりも、自分自身の意思と生活に即した氏を取り戻すために、法的手続きを利用してみてはいかがでしょうか。無料法律相談や法テラスの活用もおすすめです。

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