育児休業中に不意の交通事故に遭遇した場合、「保険会社からの休業補償」と「健康保険からの傷病手当金」の両方が関係することがあります。本記事では、これら2つの補償の違いと併用の可否について、育児休業中の状況も踏まえて丁寧に解説します。
育児休業中に交通事故に遭った場合の基本的な考え方
まず前提として、育児休業中であっても交通事故によってケガをした場合、自賠責保険や任意保険による補償の対象になります。特に休業損害に関しては「現に収入を得ていなくても、就労の意思があれば補償対象」と判断されるケースもあります。
一方、健康保険の「傷病手当金」は、労務不能状態となったときに支給されるものですが、育児休業中で就労していない場合、そもそも支給対象外になる場合が多い点には注意が必要です。
休業補償と傷病手当金の違いとは?
休業補償(損害保険会社)は、事故によって収入が減少したり、働けなくなった期間に相当する損害を金銭で補填する制度です。被害者が専業主婦や育児休業中でも、「事故がなければ労働していた可能性」があれば支給対象になり得ます。
一方、傷病手当金(健康保険)は、業務外のケガや病気で働けなくなったときに、最長1年6ヶ月間支給される制度ですが、「支給開始日前に給与支給実績がある」などの条件があります。
育児休業中は傷病手当金を受け取れる?
原則として、育児休業中は就労していない=報酬が発生していないため、傷病手当金の支給条件を満たしません。ただし、育休が終わったあとも復職できない状態が継続している場合には、育休明けから傷病手当金を申請することができる可能性があります。
この場合、医師の証明や就業不能の診断が必要となり、あくまで「復職予定であったにも関わらず就労できないこと」が条件です。
休業補償と傷病手当金は併用できるのか?
実務上は、「休業補償(任意保険)と傷病手当金」は併用は可能ですが、二重取りはできません。つまり、同じ休業期間において、両方から同額を受け取ることはできず、保険会社が傷病手当金分を差し引いて支払うなどの調整が行われます。
たとえば、任意保険の休業損害が1日8,000円、傷病手当金が1日5,000円だった場合、保険会社は差額の3,000円を支払うことになるケースが多いです。
実例:育休中の事故と補償のパターン
ある会社員の方が育児休業中に事故で負傷した事例では、任意保険会社から「就労意思が確認できたため」休業補償が支払われました。一方で、傷病手当金については、育休中は対象外とされ、育休明けに就労できない状態となったタイミングから申請が認められました。
このように、育休中の補償は状況によって分かれるため、保険会社・健康保険組合・勤務先それぞれに確認することが大切です。
まとめ:事故による補償は「就労意思」と「制度の条件」が鍵
育児休業中であっても、交通事故に遭った場合の補償を受けられる可能性はあります。ただし、傷病手当金は育休中の支給が難しいことが多く、復職タイミングと合わせて制度を確認する必要があります。最終的には、任意保険会社と健康保険組合の双方に相談し、適切な請求手続きを行うことが重要です。