近年、都市部を中心に自転車の利用者が急増していますが、それに伴って問題となっているのが「スマホ運転」や「信号無視」といった違反行為です。特に車両と接触した際には、自転車側の違反が原因でもなお交通弱者として扱われるケースがあり、法制度とのズレが社会的な課題となっています。
自転車も「車両」扱いであるという事実
道路交通法上、自転車は「軽車両」に分類されており、信号無視や歩道の逆走、スマートフォン操作しながらの走行などは明確な違反です。
例えば、赤信号を無視して交差点に進入すれば、自動車と同様に反則金や違反点数の対象となる場合があります。特に事故が発生した際は、民事責任として数百万円以上の賠償命令が出ることもあります。
なぜ取り締まりが緩いままなのか?
現行制度では、自転車に対する直接的な罰則の執行は難しく、警察官による注意・指導にとどまるケースが多いのが現状です。また、警察の人員や時間的なリソースが限られており、自転車違反は優先度が低いとされてきました。
ただし、2023年からは警視庁や一部自治体で「自転車指導警告カード制度」が拡大されており、再違反者には講習義務が課されるなど、段階的な法強化が進んでいます。
自転車による加害事故の深刻な実態
実際に、スマートフォンを操作しながら走行していた自転車が高齢者に衝突し、重篤な後遺症を残す事故も発生しています。2013年には、女子高生の自転車が歩行者に衝突し、9500万円の賠償命令が出された事例も話題となりました。
こうした事例からも、加害者が未成年や高齢者であっても、事故の責任を免れることはできません。
来年度からの法改正に向けて何が変わるのか
2025年度からは、自転車利用者に対する罰則強化や講習義務の対象範囲が全国的に拡大される予定です。特にスマートフォンの操作に関しては、車と同様に「ながら運転」として即時検挙の対象とする動きが検討されています。
また、民間による自転車保険の義務化が全国に広がりつつあり、加入していないと学校や会社での利用が制限されるケースも出てきています。
今すぐできる安全対策とマナー向上のために
まずは「自転車は車両である」という意識を利用者全体が持つことが出発点です。そのうえで、以下の点を心がけましょう。
- スマホやイヤホンを使用しながらの運転は禁止
- 信号や一時停止は車両と同様に遵守
- 歩道は原則走行禁止、通行可能な場合も歩行者優先
- 夜間は必ずライトを点灯
- 小学生以上はヘルメット着用の努力義務がある
地域によっては警察や学校がマナー講習を実施しているため、積極的に参加することもおすすめです。
まとめ
自転車による違反行為は、社会的にも法的にも看過できない問題となっています。交通弱者であっても、違反があれば事故の加害者になり得るという意識を持つことが大切です。
来年度の法改正を待たずとも、今からできるルールの遵守とマナー向上に取り組むことで、誰もが安心して道路を利用できる社会が実現されるでしょう。