固定資産税や国税の滞納がある場合に送付される「督促状」について、「何回まで送れるのか?」「時効は本当に無限に延びるのか?」という疑問は納税者にとって極めて重要です。本記事では、地方税法や国税通則法を根拠に、督促状の回数制限や時効の更新の仕組みを詳しく解説します。
督促状の送付は1回限りが原則
まず、地方税法第332条および国税通則法第37条に基づき、督促状の送付は法的に義務づけられた行政手続きです。これらの条文では、「督促は、納期限後一定期間経過後に1回行うことができる」とされており、明示的に「複数回出してよい」とは規定されていません。
実務上も、1案件あたりの督促状は原則1回のみとするのが一般的です。再度督促する場合は「催告書」や「納付勧告」など別形式の文書が用いられます。
督促により時効が更新される仕組み
地方税の徴収権には5年、国税には原則5年または7年の時効があります(地方税法第18条の2、国税通則法第72条)。
この時効は、督促状の発送により一度リセットされ、新たに5年の期間が始まります(いわゆる「時効の更新」)。そのため、自治体としては時効完成の直前に1回督促を行うことで、徴収権の維持が可能です。
では無限に督促で時効を延ばせるのか?
実務上、確かに理論上は「4年11ヶ月おきに1回督促すれば時効は完成しない」という運用も可能です。ただし、複数回の督促状送付による時効更新は法的に認められていません。
つまり、1つの税目(例:令和2年度の固定資産税)に対し、複数回督促を出すことで何度も時効更新することはできない、という見解が法学的にも行政実務上も一般的です。
関連条文と法的根拠
- 地方税法 第332条:「納期限後20日以内に督促をしなければならない」
- 地方税法 第18条の2:「時効は督促その他政令で定める行為により更新する」
- 国税通則法 第37条:「納付期限後、督促をしなければならない」
- 国税通則法 第72条:「徴収権の時効は5年、または7年」
これらからもわかる通り、1回の督促に時効更新効果はあるが、それを繰り返し行う制度設計にはなっていないことが明確です。
再督促や催告文は時効更新にならない
自治体や税務署が送る再度の「納付案内」や「催告書」は、あくまで行政上の注意喚起であり、法的な「督促状」ではありません。
したがって、それらには時効更新効果がないため、納税義務者は「前回督促から5年経過したか否か」を慎重に判断する必要があります。
まとめ
固定資産税や国税における督促状は、原則1案件1回までが通常運用です。その督促によって徴収権の時効が更新され、新たに5年間の猶予が発生しますが、同一件について複数回の督促で無限に時効を延ばすことはできません。
納税義務者としては、自身の納付履歴や督促履歴を確認し、5年経過していれば時効援用も視野に入れることが重要です。法的判断が必要な場合は税理士や弁護士への相談をおすすめします。