山間部や農村地域において野生動物との遭遇リスクが高まるなか、自衛のために罠を設置したり駆除を考える人も増えています。特に熊の被害が報道されると「自分でも対策できるのでは」と思う人もいるかもしれませんが、野生動物の捕獲や殺傷は厳しく法律で規制されています。本記事では、日本で熊などの野生動物を無許可で捕獲・殺傷した場合にどのような法的リスクがあるか、詳しく解説します。
狩猟には「狩猟免許」と「狩猟者登録」が必要
日本では鳥獣の保護および狩猟の適正化に関する法律(通称:鳥獣保護管理法)に基づき、野生動物の捕獲・駆除には都道府県が発行する「狩猟免許」と「狩猟者登録」が必要です。特に熊などの大型獣を対象とするには「第一種銃猟免許」や「わな猟免許」が該当します。
罠を設置するだけでも、免許なしで行えば違法行為とされる可能性が高く、発覚すれば罰則の対象になります。
無許可で熊を殺すとどうなる?刑罰と罰金
鳥獣保護管理法では、無許可で野生鳥獣を捕獲・殺傷した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります(第83条)。また、罠や銃器を使用していた場合は、銃刀法違反や軽犯罪法違反など、他の法律にも抵触することがあります。
さらに、熊は地域によっては特定鳥獣保護管理計画の対象になっており、個体数や駆除の管理も厳密に行われています。
正当防衛の場合はどうなる?
やむを得ず熊に襲われた際の自己防衛行為は、刑法上の「正当防衛」として違法性が阻却される可能性があります。ただし、その場の状況が適切に証明できない限り、事後的に違法と判断されるケースもあるため、あくまで例外的な措置と捉えておくべきです。
山林での作業中や登山などで熊と遭遇した場合は、まずは鈴やクマスプレーなどで回避する努力をすることが求められます。
YouTubeなどの海外動画の真似は危険
ネット上では、海外の人物が熊などを罠で仕留める様子を撮影した動画も見かけますが、それを日本国内で真似ることは非常に危険であり違法行為となる可能性があります。
また、日本では生物多様性保護や動物福祉の観点から、野生動物の取り扱いについては非常に慎重であり、規制の対象も厳格です。軽い気持ちで罠を仕掛けることは避けましょう。
正しい手段で熊害に対処するには
熊の出没が頻発している地域では、自治体や環境省が駆除班を設けたり、有害鳥獣駆除のための特別許可を発行しています。遭遇した場合や危険が迫っていると感じた場合は、まずは役所や地元の猟友会に相談することが重要です。
市民が自ら罠を設置して対処することは法律上も危険性の面でも大きなリスクが伴います。個人判断ではなく、専門家や行政機関の協力を得ることが賢明です。
まとめ:熊の捕獲や殺傷は資格と許可が必須
熊を含む野生動物の捕獲や駆除には、法的な資格と適切な手続きが必須です。無免許での行為は違法であり、罰則の対象となる可能性があります。YouTubeなどで見た方法を真似ることは控え、適切なルートで安全に対応するよう心掛けましょう。