国際的な親子関係と未成年者の国際結婚における準拠法の選定と実務的検討

グローバル化が進む中、異なる国籍や法体系をまたぐ家族関係や結婚に関する法的問題はますます増えています。本記事では、認知と未成年者の国際結婚をめぐる準拠法の問題を、実例に基づいて解説します。

認知における準拠法の基本的な枠組み

日本の法制度においては、認知に関する準拠法は「法の適用に関する通則法」第32条が基準となります。認知の準拠法は、子の本国法とされ、また認知の方式については父の本国法または母の本国法によっても適法であれば認められます。

したがって、本件において、B男がXを認知しようとする場合、Xの本国法、すなわち「日本法」が準拠法となります。よって、日本法の規定に従って認知を行う必要があります。

Xが成人している場合の認知の可否

Xはすでに22歳であり、認知には本人の承諾が必要です(民法781条2項)。つまり、B男が認知届を提出するには、X本人の同意が必須となります。逆に言えば、Xが承諾さえすれば、成人後の認知も問題なく可能です。

また、Xの国籍が帰化により日本国籍である以上、日本民法に基づいた手続が原則として適用されます。

未成年者の国際結婚に関する準拠法

国際結婚における準拠法については、「通則法」第25条に基づき、婚姻の成立要件は各当事者の本国法によります。つまり、A子とB男の婚姻が有効であるためには、A子には日本法が、B男には乙国法が適用されます。

今回の事例では、甲国法(A子が滞在している国)および乙国法では、男女ともに親の同意があれば、18歳と16歳で婚姻可能とされています。よって、両親の同意があれば、年齢要件を満たして婚姻が有効に成立する可能性が高いといえます。

日本法における未成年婚の制限

一方で、日本法においては、2022年の民法改正により、男女ともに婚姻可能年齢が18歳に統一され、かつ未成年者の婚姻には家庭裁判所の許可が必要となりました。これにより、A子が日本国籍を有する場合、日本法が適用されるため、A子はまだ17歳である以上、日本法の要件を満たさないと婚姻は成立しないことになります。

したがって、日本法の適用によっては、親の同意があっても婚姻は認められない可能性が高く、家庭裁判所の許可が得られない限り、法的な障壁が残る点には注意が必要です。

複数の国の法が絡む場合の実務的対処

このように複数の国の法が交錯する場合、実務的には次のような対応が求められます。

  • 日本国籍を有する者については、日本法の要件を満たすことが前提となる
  • 現地国での婚姻成立要件も別途確認する必要がある
  • 将来的に日本で婚姻の効力を主張する可能性があるなら、日本の戸籍手続きに基づいた届出も必要

また、認知についても、国籍の変遷や親子関係の承諾有無など、複数のファクターを総合的に検討する必要があります。

まとめ:国際的な家族関係には慎重な法的検討を

今回のケースは、認知と婚姻という二つの異なる局面において、準拠法が重要な判断要素となります。いずれのケースでも、日本法が最終的な判断基準になる場面が多く、通則法をベースとした冷静な判断と、場合によっては家庭裁判所や専門家の助言を仰ぐ姿勢が大切です。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール