過去の交際関係におけるトラウマやモラルハラスメントの影響が残る場合、加害者に思いを伝えたい、記録を削除してほしいという気持ちは自然なものです。しかし、その手段によっては、思わぬ法的リスクを招くこともあります。この記事では、被害を受けた側が冷静に対応し、自分を守りながら想いを伝えるための方法と注意点を解説します。
精神的苦痛を手紙で伝えることの意義とリスク
被害を受けた側として、「なかったことにされたくない」「自分の苦しみを理解してほしい」と感じるのは当然です。手紙でその思いを伝えることは、自己表現の一環であり、癒しにつながることもあります。
しかし、受け取る相手にとってはその手紙が「嫌がらせ」や「執着」と取られる可能性があり、特に一方的な連絡が繰り返されるとストーカー規制法の対象となるおそれもあります。
ストーカー規制法に抵触しないための注意点
ストーカー規制法では、「つきまとい」「監視」「面会の要求」などに加え、「面識のある元交際相手への一方的な連絡」も対象となり得ます。特に、恋愛感情のもつれが関与する場合、たとえ善意の内容でも注意が必要です。
そのため、手紙の中で「今後は一切連絡をしない」「謝罪や返信を求めていない」などの文言を明記することで、相手に安心感を与え、法的トラブルのリスクを軽減することができます。
交際中の動画や記録の削除要求について
交際中に撮影された動画が性的な内容を含む場合、本人の同意なく保存・公開されることは「リベンジポルノ防止法」により禁止されています。本人が削除を求めることは正当な権利です。
削除を依頼する際は、証拠を残すためにも書面で冷静に要望を伝えることが推奨されます。ただし、要求が感情的になったり脅迫的にならないように注意が必要です。
実際にあったトラブルとその対応事例
ある女性は、元交際相手に「一度だけ思いを伝えたい」と長文の手紙を送りました。その内容は丁寧でしたが、相手が「怖い」と感じ、警察に相談。結果として「注意」で済みましたが、内容次第では接近禁止命令に発展する可能性もありました。
別の事例では、相手にメールで動画削除を求めたところ、相手が拒否。その後、弁護士を通じて正式に削除請求を行い、法的手続きを経て削除されたというケースもあります。
どうしても伝えたいときの代替手段
手紙を直接送ることに不安がある場合は、以下のような代替手段も検討できます。
- 弁護士を通じて内容証明郵便で通知を送る
- 共通の第三者を介して連絡を伝える
- 日記やSNSで匿名で思いを表現する(個人情報や実名を記載しないこと)
これらの方法であれば、自分の気持ちを整理しつつ、法的なリスクを回避できます。
まとめ:自分の心を守りながら伝える方法を選ぶ
モラハラによる精神的苦痛は長く残るものです。しかし、それにどう向き合うかは慎重さが求められます。一度だけであっても、連絡手段によっては「ストーカー」とみなされる可能性もあるため、自己表現の方法や伝え方はよく考えましょう。
伝えたい気持ちがあるなら、法的リスクを理解し、安全な手段で自分の想いを伝えることが大切です。感情だけで動かず、冷静な選択を心がけましょう。必要であれば、法律の専門家への相談もおすすめです。