裁判費用は最初から被告が支払えるのか?裁判費用の負担原則と注意点をわかりやすく解説

裁判を起こす際、気になるのが「裁判費用は誰が払うのか」という点です。特に明らかに被告が悪い場合、「最初から被告が費用を負担すべきでは?」と考える方も少なくありません。しかし、実際の日本の民事訴訟制度では、その考え方は必ずしも認められていません。本記事では、裁判費用の支払いに関する原則や、被告への請求が成立する仕組みを、具体例を交えて詳しく解説します。

裁判費用の原則は「勝訴者負担の原則」

日本の民事訴訟法では、「訴訟費用は原則として敗訴者が負担する」と定められています(民事訴訟法第61条)。つまり、訴えを起こして勝訴すれば、原則として被告が訴訟費用を負担することになります。

ただし、訴訟を起こす時点では、裁判所は勝敗を判断していないため、最初から「被告に裁判費用を支払わせる」とすることはできません。

原告が裁判費用を一時的に負担する仕組み

訴訟費用(例:収入印紙、郵券、弁護士費用の一部など)は、原則として裁判を起こす「原告」が一時的に立て替えます。これは「裁判制度を利用する者が必要なコストを先に負担する」という制度上の合理性によるものです。

ただし、最終的に原告が全面勝訴した場合、裁判所は「訴訟費用は被告の負担とする」という判決を出すため、後日取り戻すことが可能です。

裁判費用に含まれるものと含まれないもの

  • 訴訟費用に含まれるもの:裁判所に納める費用(収入印紙)、郵便切手代、証人の旅費・日当など
  • 含まれないもの:原告自身の交通費・宿泊費、弁護士費用の全額(ただし例外あり)

弁護士費用については、交通事故や不法行為など特定の案件では、一部が「損害」として賠償対象になる場合があります。

「被告が悪いから費用は払わせたい」という考えの落とし穴

気持ちとしては理解できるものの、裁判は形式的な証拠・主張に基づいて公平に判断されるため、「被告が悪いと決めつける」視点は危険です。訴訟の結果によっては一部敗訴や和解となり、費用の負担が分割されたり、逆に原告が支払うこともあります。

また、裁判官による判決には幅があり、一見理不尽に見える判断が出る可能性もあるため、訴訟提起の前には慎重な検討と、弁護士等の専門家への相談が重要です。

被告に裁判費用を最初から負担させることはできるか?

日本の裁判制度では、訴訟前に被告に費用を払わせる法的手段は存在しません。したがって、「どうせ負けるのだから先に払わせたい」といった申し立ては通りません。

ただし、民事訴訟以外の手段(例:示談や調停)であれば、事前に合意書を作成し「費用はすべて被告側が負担する」と明記することで合意が可能です。このような文言があると、後に裁判になってもその内容が尊重される場合があります。

まとめ:勝てば取り戻せるが、立て替えは避けられない

裁判費用は基本的に「敗訴者負担」となるものの、訴訟を起こす時点では原告が費用を一時的に負担するのが制度のルールです。明確な証拠と主張があれば、最終的に被告から取り戻せる可能性は高いですが、「最初から被告に支払わせる」ことはできません

費用に不安がある場合は、法テラスの無料相談や訴訟費用の立替制度、調停・和解手続きなども検討するとよいでしょう。安易な感情で裁判に踏み出す前に、法的手続きの現実とリスクを正しく理解することが大切です。

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