交通事故の過失割合は、道路交通法や判例、実務上の運用に基づいて決定されますが、実際の事故状況によって大きく変動することもあります。今回は、直進車と対向右折車の事故において、相手が右折専用レーンを無視して直進レーンから無理に右折した場合、過失割合にどのような影響があるかを解説します。
基本の過失割合:直進 vs 対向右折の原則
交差点での直進車と右折車の事故では、一般的な過失割合は直進:右折 = 2:8が原則とされています。これは、直進車に進行優先があるためです。
ただし、信号無視やスピード超過、右折車の確認不足など、個別の要素が過失割合を補正する要因になります。
相手が直進レーンから右折した場合の法的評価
相手が右折専用レーンではなく、直進レーンから右折してきたという行為は、明確な進路変更違反・通行帯違反に該当する可能性があります(道路交通法第20条・第34条違反)。
このような進行方法違反が認定されれば、右折車側の過失がさらに大きく評価され、過失割合が「9:1」または「95:5」に修正されることもあります。
ドライブレコーダー映像が過失判断に与える影響
実際の事故状況が録画されたドライブレコーダーの映像は、保険会社や裁判所での過失割合の判断材料として非常に有効です。
映像によって「右折専用レーンを無視」「信号停止義務違反」「急な飛び出し」などが客観的に立証されれば、10対0に近づける交渉余地が生まれます。
過失割合交渉の実例と裁判所判断の傾向
判例や交通事故の実例でも、以下のような過失補正の事例があります。
- 直進車が青信号で進行、相手車が進路変更違反で右折 → 「直進:右折 = 1:9」に修正
- 相手がウインカー無し・停止せずに右折 → 「直進:右折 = 0:10」が認められた判例もあり
ただし、完全な10対0が認定されるには「直進側に一切の落ち度がない」と認められることが必要であり、ドライブレコーダーの内容・事故直前の速度・注意義務の履行状況も検証されます。
保険会社との交渉の進め方とポイント
保険会社は、初期段階では「基本割合」に基づいて機械的に提示する傾向があります。しかし、相手の違反行為が明白な場合は、以下のような行動が有効です。
- ドライブレコーダーの該当シーンを保険担当に共有する
- 交通事故証明書や実況見分調書に違反内容を明記してもらう
- 納得できない場合は弁護士に相談する(交通事故に強い専門家)
弁護士特約を付けていれば費用負担なく専門家に交渉を任せることも可能です。
まとめ
交差点事故において、対向車が右折専用レーンを無視して直進レーンから右折してきた場合、その違反行為は過失割合を有利に修正する根拠になります。
状況証拠としてドライブレコーダーを活用し、冷静に保険会社と交渉を進めることで、「8:2」から「9:1」またはそれ以上に修正される可能性は十分にあります。専門家の協力も視野に入れて、納得できる対応を目指しましょう。