偶発的なトラブルの現場に居合わせ、仲裁に入った結果、意図せず傷害事件の加害者と見なされてしまうケースは実際にあります。このような状況においては、冷静な対応と正確な知識が非常に重要です。本記事では、加害者とされた場合のリスクや示談交渉の判断基準、刑事手続きとの関係について解説します。
傷害事件として扱われる条件とは
刑法第204条に規定される「傷害罪」とは、人の身体に傷害を与えた場合に成立します。たとえ善意であっても、相手に怪我を負わせた場合には傷害罪が適用される可能性があります。
実際に手を出していないつもりでも、制止のための行動が「暴力」と見なされることがあるため、当時の状況や周囲の証言が重要となります。防犯カメラの映像や第三者の証言があると、有利に働く場合もあります。
被害者とされる人物の素行が悪い場合でも注意が必要
相手が前科持ちであったり、金銭目的のトラブルを起こしていた過去があるとしても、それだけで事件が無効になるわけではありません。被害者の素行は裁判の中で情状として考慮されることはあっても、事件の本質には直接影響しないため注意が必要です。
むしろ、相手が計画的にトラブルを誘発していたような場合には、証拠とともに主張することで、捜査機関や裁判所の判断に影響を与える可能性があります。
示談をするか、刑事事件として進めるかの判断ポイント
示談には、起訴回避や刑の減軽といった大きなメリットがあります。特に初犯であれば、示談が成立していれば不起訴処分となる可能性が高くなります。ただし、高額な示談金を不当に要求されるケースもあるため、弁護士を通じた交渉が望ましいです。
一方で、あえて刑事事件として進行させ、裁判所の判断に委ねるという選択もあります。その場合、自身の正当性を証明する必要があり、裁判の負担(時間・費用・精神的なストレス)も視野に入れて検討する必要があります。
加害者側から連絡することの注意点
加害者とされた場合でも、被害者に直接連絡を取ることは逆効果になることがあります。接触が「圧力」と受け取られたり、証拠隠滅と誤解される可能性もあるため、警察が連絡先を教えないのはその配慮です。
連絡を取りたい場合は、弁護士を通じて行うのが最も安全です。相手との交渉も含め、法的な枠組みの中で対応することが大切です。
刑事事件に進んだ場合のデメリット
刑事事件として進行すると、以下のようなリスクがあります。
- 前科がつく可能性(罰金刑でも記録に残る)
- 就職・転職・資格取得への影響
- 長期にわたる裁判・取調べなどの精神的ストレス
- 事件が記録として残り、将来のトラブル時に不利に働く可能性
一方で、無実を証明できれば不起訴や無罪判決の可能性もあるため、自身の立場を正確に見極めることが重要です。
まとめ:示談か刑事手続きかは冷静な判断が鍵
ケンカの仲裁に入ったつもりが傷害事件として扱われた場合、示談と刑事手続きの両面から対応策を考える必要があります。示談には早期解決と前科回避のメリットがあり、刑事事件では正当性を主張する機会もあります。
いずれの選択にせよ、早めに弁護士に相談することが最善の一手です。法律の専門家の助言を得ることで、冷静かつ適切に対処することができます。