家族の死後、相続手続きは想像以上に複雑になることがあります。とくに不動産や未整理の通帳、過去の保証債務の可能性が絡む場合、どの専門家に相談すべきか迷うのは当然です。本記事では、相続でよくあるトラブルや判断基準をもとに、税理士と司法書士の違いを整理し、適切な相談先の選び方をご紹介します。
税理士と司法書士、それぞれの専門分野の違いとは?
税理士は主に「相続税の申告」「生前贈与の対策」「財産評価」など税務に関する業務を専門としています。一方、司法書士は「不動産の名義変更(登記)」「相続関係説明図の作成」「家庭裁判所への手続き」など、法務的な手続きを代行します。
たとえば、遺産に土地や建物があり名義変更が必要な場合は司法書士が中心に活躍し、相続税の申告が発生するなら税理士の関与が必要です。
今回のケースにみる複雑な相続の要素
今回のように、以下のような状況が重なると、相続の難易度は高まります:
- 亡くなった方が複数(父、母、兄)いる
- 未整理の通帳や株式の存在が不明確
- 保証人になっていたかもしれないローン債務
これらは「負債の相続」のリスクもあるため、まずは「相続放棄」や「限定承認」の検討が必要な場合もあります。このような調査・判断には法的な知識が求められるため、司法書士のサポートが有用です。
まず相談すべきは司法書士。必要に応じて税理士へ連携を
財産内容が不明な状況では、まず司法書士に相談し、以下の点を明らかにするのが合理的です:
- 相続人の確定
- 相続関係図の作成
- 遺産の調査と整理
- 登記に必要な書類の整備
そのうえで、相続財産の総額が基礎控除(3000万円+600万円×相続人数)を超える場合には、税理士の登場となります。
実例:複数の相続が未処理で家の売却ができなかったケース
ある女性が父母兄を相次いで亡くし、実家を売却しようとしたところ、不動産の名義が祖父名義のまま。母や兄の相続登記が未処理だったため、手続きに1年以上を要したというケースがあります。
このような場合、司法書士が「法定相続情報一覧図」や「遺産分割協議書」の作成支援を行い、登記手続きまでを一貫して代行しました。途中、相続税が発生しそうなことが判明したため、提携する税理士にバトンタッチしスムーズに対応できたそうです。
司法書士・税理士を選ぶ際のチェックポイント
相続に強い専門家を選ぶには、以下の点を確認しましょう:
- 相続関連業務の経験が豊富か
- ワンストップで税理士や弁護士と連携してくれるか
- 初回相談が無料か、料金体系が明確か
「相続ワンストップサービス」などを提供する事務所も増えており、複雑な手続きを一括で任せられるのが強みです。
まとめ:まずは司法書士へ相談、状況次第で税理士と連携を
今回のように遺産の全容が不明で過去の相続手続きも未了という場合、まずは相続人確定や不動産名義整理を得意とする司法書士に相談するのが適切です。財産の調査とともに、税理士との連携が必要かどうかも見えてきます。
相続は放置するほど複雑化するため、早期の専門家相談が円滑な解決の鍵となります。