かつて高値で購入された不動産が、今では税金もかからない「負動産」と化し、手放すこともできずに管理義務だけが残る──そんなケースが日本各地で増えています。この記事では、草刈りや管理の負担が重くのしかかる使い道のない土地を、将来的にどう扱うべきか、相続放棄や代替手段も含めて具体的に解説します。
家も建てられない「価値のない土地」を抱える苦悩
バブル期に数千万円で購入された土地が、現在では建築不可の森林や雑種地として「価値がゼロ、もしくはマイナス」となる例が多発しています。特に都市部から離れた地域では、売却先が見つからず、草刈りや行政からの除草命令など管理コストだけが発生する状態となりがちです。
今回のように、義父が購入した土地を義母が名義人として持ち続け、草刈り等の管理を次世代が担うケースでは、当事者が高齢化することでリスクと負担がさらに拡大します。
土地を相続したくない場合の「相続放棄」という選択肢
相続人が「この土地は要らない」と判断した場合、家庭裁判所での「相続放棄」が最も確実な方法です。義母が亡くなった後、3か月以内に申述書を提出することで、土地を含む一切の財産(正・負問わず)を放棄できます。
ただし、注意点としては「一部の財産だけを放棄」はできず、現金や預金も含めてすべて放棄することになります。そのため、義母の遺産に価値のある資産が含まれていないか事前に確認しておきましょう。
相続前にできる準備と手放す努力
相続放棄を前提としていても、生前にできることがあれば試しておく価値はあります。たとえば。
- 不動産会社・地元業者への売却打診(値がつかないこともある)
- 寄付(公的機関や自治体に無償譲渡)
- 隣地所有者との交渉(買い取りや使用の申し出)
今回のように隣人とトラブルがあった場合でも、法的代理人を立てて交渉を行えば、解決の糸口が見えることもあります。
どうしても手放せない場合の低コスト管理方法
相続することを前提とせざるを得ない場合、管理の負担を軽減する方法も考えましょう。例えば。
- 地域のシルバー人材センターに草刈りを依頼(比較的安価)
- 森林組合や地域NPOと連携し、土地の活用・管理を一部任せる
- 固定資産税が非課税でも、管理不全で行政指導が入るため、最小限の維持は必要
スズメバチ被害など命に関わるリスクがある場合は、市役所や保健所に危険生物の駆除申請を出すことも検討できます。
相続放棄後の扱いと「誰の土地になるのか」
相続放棄が受理された場合、その相続順位は次の人へ移ります。すべての法定相続人が放棄すれば、「相続財産管理人」が選任され、家庭裁判所の監督のもとで清算が行われます。
このプロセスを経て最終的には国庫に帰属することになりますが、その間に管理責任や清算費用が発生することもあるため、弁護士などの専門家と事前に相談しておくことが重要です。
まとめ:負動産は「放棄」「管理軽減」「譲渡」の三方向で考える
バブル期に購入した使い道のない土地を次世代が抱え続ける必要はありません。義母の相続のタイミングで相続放棄を行えば、合法的に関係を断ち切ることができます。
とはいえ、放棄にも手続きや注意点があるため、家族でよく話し合い、司法書士や弁護士への事前相談をおすすめします。感情的な負担だけでなく、法的にも安心できる形で「不の連鎖」を断ち切りましょう。